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7-1 建築基準法が改正されると聞きましたが、どのようになるのでしょうか。

7-1 建築基準法が改正されると聞きましたが、どのようになるのでしょうか。

A(全木連:企画部指導課)
  平成10年6月5日に成立した建築基準法の一部改正により、建築確認・検査の
 民間開放、性能規定化、中間検査の導入などが平成12年(2000年)6月から
 実施されます。
  このなかでも「建築基準の性能規定化(建築物に求められる技術基準について測
 定可能な性能を明らかにして、必要な値などを規定するもので、性能規定では、試
 験や計算により達成すべき性能を満たしていることが確認されれば、どのようなも
 のも使用可能となることから、選択の自由度を高め、技術開発等を誘発する効果を
 持っています。→ただし、木造住宅に対する現行の仕様規定は形は変わりますが基
 本的には存続します)」は、従来の「仕様規定(建築物の格部位などについて、使
 用する材料やその寸法などを具体的に規定し、構造や部材等の安全性等を確保する
 ものです。)」から抜本的な見直しとなり、建築物のみならず、木材をはじめとす
 る各種建築資材・材料・パーツにおいても影響を及ぼすことになります。
  改正の概要は、次のとおりです。

〔建築基準法の一部を改正する法律の要点〕

建築確認等手続きの合理化

  1.建築確認・検査の民間開放

建築規制内容の合理化

  2.建築基準の性能規定化等基準体系の見直し
  3.土地の有効利用に資する建築規制手順の導入

建築規制の実効性の確保

  4.中間検査の導入
  5.確認検査等に関する図書の閲覧

……………………………………………………………………………………………………
〔建築基準法の一部を改正する法律概要〕

1 建築確認・検査の民間開放
背景

建築確認や検査等の充実・効率化にあたり、行政の十分な実施体制が確保できない状況。官民の役割分担の見直しにより的確で効率的な執行体制の創出が必要。

 

 行政執行体制の現況
・建築着工件数 年間約110万件
・建築主事数 約1,800人
建築主事1人当たり 年間600件
(平成8年度 全国ベース)
・諸外国に比較しても建築行政職員数は少ない。
(人工10万人当たり 日本5.8人、米25.7人、豪23.0人)

改正のポイント        

これまで特定行政庁の建築主事が行ってきた確認・検査業務について、新たに必要な審査能力を備える公正中立な民間機関(指定確認検査機関)も行うことができるものとする。

(1)民間機関による確認・検査の導入方式
 確認検査機関が確認・検査を行ったものは、建築主事の確認・検査を受けたものと
みなす。
(2)指定確認検査機関の概要
[1]対象 非営利法人(注1)、営利法人(注2)を問わず対象とする。
 注1:日本建築センター等
 注2:民間会社
[2]指定 都道府県知事が指定。(複数の都道府県で業務を行うものについては建設大
 臣)
[3]指定基準
 ・確認検査員(建築基準適合判定資格検定合格者)が一定数以上
 ・役職員の構成が業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないこと
 ・確認等の業務以外の業務を行うことによって業務が不公正になるおそれがないこ
  と 等(注3)
 注3:ゼネコン、ハウスメーカー等が子会社をつくり、自社物件を扱うことはでき
   ない→第3者性がある必要がある
(3)指定確認検査機関の役職員の義務等
 守秘義務を課すとともにみなし公務員規定をおく。
(4)特定行政庁と指定確認検査機関の関係
 指定確認検査機関は、必要な事項を特定行政庁に照会することができ、特定行政庁
 は、必要な指示及び確認等の取消を行うことができる。
(5)審査手続き等は、指定確認検査機関が自主的に決めることができる。(注4)
 注4:土・日曜日も行ったり、すぐ行う等
改正の効果         

 建築主のニーズに即した建築確認・検査サービスの提供が可能となる。
 指定確認検査機関の活用に伴い、行政は監査、違反是正、処分等の間接コントロールを中心とすることによって、制度の実効性を確保する。

 注5:建築物が建築基準法上、適正であれば建築確認を行う。→風俗営業等の用に
   供する建物については、別途、条例で定めてもらうようにした

〔参考〕
○新たな建築確認・検査手続の流れ

※指定確認検査機関は、確認・検査の実施後特定行政庁に報告を行う。

○指定確認検査機関の指定基準の考え方
 [1]設計、施工等を業務とする者が兼業することや単独で設立することはできない。
 [2]設計、施工等を業務とする者も参加して共同で設立する場合は、公平性客観性の
  観点から特定の企業が支配力を及ぼさないよう役職員構成や出資比率等を個別に
  審査の上、指定する。


2 建築基準の性能規定化等基準体系の見直し

背景

建築物の設計の自由度の拡大や建築生産での高コスト構造の是正が必要。規制項目の見直し、技術革新や海外資材の導入の円滑化を可能にする建築基準体系の導入が課題。

改正のポイント        

一定の性能さえ満たせば多様な材料、設備、構造方法を採用できる規制方式(性能規定)を導入する。あわせて、建築物単体の規制項目の見直しを行う。

(1)建築基準の性能規定化
 [1]性能項目、性能基準を明示するとともに、それを検証するための試験方法や計算
  方法を提示する。(具体の基準は政令による)
   [具体例]
    ・耐火設計法の導入により大規模木造等の建築が容易になる。
    ・屋根材料の延焼防止性能基準の導入により太陽電池一体型屋根材などの新
     製品の使用が可能となる。
    ・その他、避難設計法、性能重視型構造計算法、建築設備性能試験等を導入
     する。
 [2]性能規定化に対応した、申請者の負担軽減、確認審査の効率化の措置を講じる。
  ○構造技術基準を満たす型式の標準設計仕様等の認定(型式適合認定)
   →建築確認を円滑化(認定図書との適合をチェック)
   [具体例]繰返し使用する設計仕様書
  ○規格化された型式の部材、設備、住宅等の製造者の認証(型式部材等製造者認
   証)
   →建築確認・検査を省略(マーク等の表示をチェック)
   [具体例]量産型の建築設備(エレベーター等)、プレハブ住宅
  なお、建設大臣は、高度な技術審査能力と公正中立な審査体制を有する国内外の
 民間機関(指定認定機関等)にこれらの認定・認証を行わせることができる。

 [3]従来の仕様規定は、性能基準を満たす例示仕様として政令・告示で位置づける。

(2)その他の規制項目の見直し
  住宅居室の日照規定の廃止、採光・地下居室規定の緩和、準防火地域内の木造3階
 建て共同住宅建築制限の緩和を行う。

改正の効果          

 性能規定化で、仕様基準を満たす必要がなくなり、設計の自由度がまる。
 性能基準が明確になるため、技術開発や海外資材の導入が促進され、より合理的で低コストの技術等の円滑な導入や市場の活性化が期待される。

〔参考〕
新たな建築基準の体系

 法
                  性 能 項 目
 (例)耐火性能  
建築物が通常の火災時における加熱に火災が終了するまで耐えること。
性能項目
・防火性能
・地震等に対する構造安全性能
・汚物処理性能  ・遮音性能 等
政令
性  能  基  準
(例)柱・はり等の主要構造部の部位別の耐火性能基準
       検 証 方 法
(例)耐火設計法
(火災の性状を予想し、主要構造部が耐力を保持できること等を確認する方法
       例 示 仕 様
(例)主要構造部が鉄筋コンクリート造であるもの

 < 性能規定の導入による効果 >
 ・耐火設計法の導入により、大規模木造ドーム等の建築が容易になる。
 ・新しい構造計算の方法の導入により、免震構造建築物等の建築が容易になる。
  〔免震構造とは〕
   特殊ゴム等により構成される免震装置により、地震時の建築物の揺れを小さく
   する構法。
    ・柱や壁等の構造躯体のスリム化
    ・窓や壁等の仕上げ材の破損防止
    ・家具等の転倒防止
   等が可能となる。


3 土地の有効利用に資する建築規制手法の導入
背景

 都市の再整備にあたり、狭小な敷地が多く、基盤が必ずしも十分に整っていないわが国の市街地では、敷地ごとの規制のみでは、市街地環境を確保しつつ、土地を有効利用することが困難。  

改正のポイント       

 土地の集約的利用による合理的な建築計画を可能にし、土地の有効利用に資するため、隣接建築物との設計調整のもと、複数建築物について一体的に規制を適用する特例制度を創設する。    

(1)連担建築物設計制度(仮称)の創設
 [1]規制内容
   複数敷地により構成される一団の土地の区域内において、既存建築物の存在を
  前提とした合理的な設計により、建築物を建築する場合において、各建築物の位
  置及び構造が安全上、防火上、衛生上支障がないと特定行政庁が認めるものにつ
  いては、複数建築物が同一敷地内にあるものとみなして、建築規制を適用する。
   ・容積率、建ぺい率等については、複数建築物全体を単位で適用。
   ・区域内の建築物相互に係る日影規制、隣地斜線制限等は定型的な基準の適合
    に代えて、設計を個別に審査判断。
 [2]手続き規定等の整備
  ・制度適用にあたって、区域内の土地所有者、借地権者の同意の義務付け
  ・認定後、対象区域等を公告するとともに、図書を特定行政庁の事務所に備えて
   一般に縦覧(なお、宅地建物取引業法の重要事項説明に追加を予定)
  ・区域内における建替え等にあたっては、当初と同様に特定行政庁が審査し、同
   一敷地内にあるものとみなして、規制を適用

(2)その他の規定の整備
  建築主事の判断による特例的取り扱いについて、建築確認の民間開放等を踏まえ、
 特定行政庁の許可による方式とする。
  (例)現行法では敷地が4m以上の幅員を有する道路に2m以上接することを原則
    としているが、これを満たさない場合であっても、安全性等の支障がないも
    のについて、基準を明確化した上、許可により建築を可能とする。
改正の効果         

 既成市街地での建築物の更新において、まとまった土地での合理的な建築計画が
可能となることにより、設計の自由度が向上し、土地の有効利用と市街地の環境の確保の両立が図られる。  

4 中間検査の導入
背景

 阪神・淡路大震災により、建築物の安全性の確保の必要性を改めて認識
(死者6,425人、うち建築物の倒壊によるもの約8割)。
必要に応じて施工中の検査も実施できるような制度の整備が必要。   

改正のポイント       

 特定行政庁は、必要に応じ、一定の構造、用途等の建築物について、中間検査を受けるべき工程を指定する。指定された建築物は建築主事又は指定確認検査機関の中間検査を受けなければ工事を続行できないものとする。 

 [1]工程指定は、期限を限って行い、必要がなくなった場合は速やかに指定を解除す
  る。
 [2]戸建住宅、プレハブ住宅等で工事監理が適正になされたものについては、特例と
  して実地検査を省略する。
 (工事監理の確認方法については厳格化を図る(省令改正)。なお、中間検査の特
  例が適用される建築物は、確認、完了検査においても特例制度が適用され、審査
  が簡略化される。)
改正の効果         

検査の徹底・充実により、建築物の安全性を確保する。  

5 確認検査等に関する図書の閲覧
背景

検査受検率の向上、行政手続きの徹底とともに、市場のルールにより建築物の質が適切に評価されるための制度的整備が必要。

改正のポイント        

特定行政庁による建築物の台帳整備を義務化する。
また、建築物の計画概要に加えて検査の実施状況等についても図書の閲覧ができるものとする。

 [1]検査履歴等の閲覧事項
  閲覧事項としては、計画概要、確認、検査履歴(中間、完了)、許可の有無等と
  する。
 [2]建築確認後に設計を変更した場合の再確認手続を明確化する。
改正の効果         

建築物についての情報提供の範囲を拡大し、消費者保護と市場機能の向上を図る

〔参考〕
 閲覧内容のイメージ

計画概要 建築主:□□ □□      建築部の概要:
設計者:○○ ○○      ……………………………
施工者:△△ △△      ………………
確 認 確認日:○年○月○日 確認者:□□ 番号:×××××
中間検査 検査日:○年○月○日 検査者:□□ 監理者:△△
工程:……………………………
検査日:○年○月○日 検査者:□□ 監理者:△△
工程:……………………………
完了検査 検査日:○年○月○日 検査者:□□ 監理者:△△
許 可 許可事項:……………………………………………
       …………………………

……………………………………………………………………………………………………
〔参考〕
 〔建築基準法の改正による木造建築物に関する規制緩和を通じた木材利用の推進〕

 建築基準法の改正により、以下のとおり木造建築物の建設の可能性が広がる。

高さが13mを超える木造建築物等の建設が可能に
(第二十一条第1項関連)

[現行]建築基準法では、高さ13m又は軒の高さ9mを超える木造建築物の建設が原
   則禁止
                 ↓
[改正後]当該建築物の主要構造部について一定の耐火性能が認められれば、当該建
   築物が建設可能

3000m2を超える木造建築物の建設が可能に
(第二十一条第2項関連)

[現行]延べ床面積3,000m2を超える木造建築物の建設が原則禁止
                 ↓
[改正後]当該建築物の主要構造部について一定の耐火性能が認められれば、当該建
   築物が建設可能

屋根を木材で葺くことが可能に
(第二十二条第1項、第二十五条及び第六十三条関連)

[現行]防火地域、準防火地域及び火災の延焼の抑制のために特定行政庁が定める地
   域においては、木材等の可燃材料で屋根を葺くことが原則禁止
                 ↓
[改正後]一定の耐火性能が認められれば、屋根を木材で葺くことが可能

準防火地域内での木造三階建て共同住宅の建設が可能に
(第二十七条第1項関連)

[現行]準防火地域での木造三階建て共同住宅の建設が原則禁止
                 ↓
[改正後]当該建築物の主要構造部について一定の耐火性能が認められれば、これら
   の建築物が建設可能

   
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