このページを  保存  お気に入りへ  印刷

堀川中国木材(株)社長の講演概要メモ
〜全木連・全木協連合同常勤役員・事務局長等会議〔研修会〕


   

 

PDFファイル添付資料(PDF文書)

全木連では、平成15年7月30日、標記会議の中で堀川保幸中国木材(株)代表取締役を招き「環境重視の木材産業経営と今後の戦略について〜環境重視は黒字経営につながる〜」と題する研修会を開催しました。

研修では、堀川社長から、環境重視は黒字経営につながることを中国木材の経営の中で具体的に証明しております。
概要を次のとおり取りまとめましたのでお知らせいたします。

〔文責:全木連・企画部指導課・細貝〕

日  時 平成15年7月30日(水)10:30〜12:00
場  所 虎ノ門パストラル 新館6階「ロゼ」の間

 

研修 3 環境重視の木材産業経営と今後の戦略について〜環境重視は黒字経営につながる〜

講師:堀川保幸 中国木材(株) 代表取締役社長

1.中国木材の沿革と事業展開

中国木材の商品は日本全国に販売しているので、皆様方にも大変お世話になっていることをお礼申し上げる。

「環境重視の木材産業経営と今後の戦略」という演題をいただいたが、環境問題となると共通の問題ではないかと思われるので、我々が今までやってきて環境重視は黒字経営につながると思っている。
今まで、中国木材は、チップ→北洋材製材→米材大型製材→木材乾燥(乾燥平角・ドライビーム)→プレカット→構造用集成材(ラミナビーム)と大型投資を続けてきた。このため大きな借り入れで投資をしてきた。そのようなことから、赤字になると企業活動が止まってしまうことになるので「赤字」との背中合わせできた。
そのため、原価を下げる、設備を改善する、合理化を行うというような効率的な投資活動を行い、やっと現在まで生き残ってこれたというのが実情である。
考えてみると、その様な合理化とか、効率化投資というのは、最終的にはCO2を少なくしていると感じる次第である。

その様なわけで、赤字を出さずにこれた。赤字を全然出していないわけではなく、ほんの僅かの期間で済んだ。
中国木材の前身は、祖父の代は酒樽を作っていた。そのため、吉野や奈良でスギ丸太を購入し、酒樽を作って酒の醸造元に納めていた。戦後、樽から瓶に変わり仕事がなくなってしまった。それも急になくなった。その様な実情を私は見ている。その様なわけで家の財産があっという間になくなってしまった。仕事のなくなる厳しさを実感している。
それで、何も財産がなくなり、それからチップの事業に入った。呉市広町に東洋パルプという会社があり、そこにチップを収める仕事を考えた。日本で一番始めてのチップ事業と思っている。1953(昭和28)年に事業化を考え、1955(30)年に納入した。日本で初めての木材チップの事業ともいえるものであることから、原料を集めること、チップを造ることに大変苦労したが、何とかチップをものにした。

現在の中国木材の基礎はチップのおかげであると考えている。そのチップも輸入チップの時代に入り、将来がないと考え、転業を考えたところ、チップに関係する製材業が一番いいのではないかと、1967(昭和42)年に北洋材の製材を始めた。その前にチップをやっていたとき、木の皮が沢山でてくるが、当初は風呂屋がお金を出して樹皮を購入してくれた。次第に売れなくなったため、樹皮を炭化し、豆炭の原料を生産したが、手間がかかり採算が合わなかった。活性炭、金属シリコン関係、二硫化炭素などの木炭を生産することで最後に利益がでた。しかし、最後は、木炭の輸入自由化で価格競争に負けたことから事業を止めた。その後、集成材をやっていたことから樹皮を乾燥のエネルギーとしたが、当時の集成材は採算が合わなくなり止め、焼却炉の時代となった。現在は、ボイラで自家発電、廃熱を木材乾燥の熱源という形でやっている。木の皮一つ取ってみてもいかに有効に活用するか、焼却炉で焼いていたものを炭に焼く、炭化についても付加価値をつける。それもだめになり、自家発電という形でこれ一つ取ってみても如何にCO2を下げるかであり、現在はこれが実っている。その様なわけで、樹皮一つ取ってみても環境重視が黒字経営に結びつくかという一つの例ではないかと思っている。

北洋材の製材に入ったが、当初はチップ工場の片隅で小規模で生産した。北洋材は海から原料が入ってくるわけであるから、海に接した沿岸工場でなければトラックで運ぶことになるのでそれだけコストが係ることになる。そのため沿岸工場に変わった。これもCO2の削減に関係している。輸入材を扱う以上は、トラックで運ぶよりは、船を直接接岸させ、直ぐに、製材工場に入るようにすることがCO2の削減に結びつくことになる。67年に北洋材製材を始めたが、当時のソ連は計画経済であるので、商売が難しく、資本主義経済と計画経済とでは大きく違い、当時のソ連からの丸太の入荷は不安定で、山火事、大水等があるたびに丸太の入荷が止まり、1977(昭和52)年に丸太が切れた。製材工場にとって丸太が切れるということは、止まってしまう。当時、北洋材だけで家を建てたりしていたが、ソ連に、家を作るためには長さの問題があるということを話したが、エゾマツが3.8、7.6、アカアツが4.8、カラマツが4、8でこれでは家にならないと提案したが受け入れられず、原木の欠品から米材に入った。

はじめは、瀬戸内筋に米材問屋が健在で、そこから筏や内航船で買い集めたが、やはり時代の流れは米材時代であり、北洋材に比べ非常に楽な拡販ができたというのが米材である。米材を一生懸命やったが、合理化から本船を入れるべきだとして、米材をはじめてから2年後には本船を入れている。やはり、問屋から曳航するロスは避けるべきだとして、広港に接岸させ、筏組みして接岸工場に揚げてくる形で進めた。これもCO2の削減に大きく結びついていると思われる。
それから、米材を始め、1港積の1港降しの大型化をやるべきだとして、大きな米材船が3港も5港も日本中の港を回るのはロスであり、CO2の削減にはならないので、1港積の1港降しとし、大幅なコストダウンと同時にCO2の削減を図った。因みに、1港につき300万〜350万円のコストになるので5港になると1,500万円以上のコストアップとなる。

大型製材に入ったのは1983(58)年で、丁度、隣に18千坪の鉄筋を造る工場が廃業することとなったことからその工場を買い、そこで大型製材を稼動させた。この大型製材なくして、現在の中国木材はなかったと思う。
1985(60)年には北洋材を完全に止めて、ベイマツに一本化した。中途半端ではどうにもならないと考えたからである。
乾燥材は1987(62)年から実験を始め、自分の家を建てたのが90年で91年に完成したが、グリーン材を使ったので床は波うち、壁はひびが入り、建具は時々動かないなど欠陥住宅となった。考えてみると、これは当社が悪く、乾燥材を供給できなかったことが原因である。この時、乾燥材なくして軸組はないと考え、91年には乾燥材に入った。しかし、顧客に説明してもなかなか通じず、何とかいい方法はないかということで、住木センターに相談に行って、自分で乾燥材とグリーン材の家を建てるので、その違いを公の機関で調べてほしいと依頼に行った。それが、クリープ試験でよいということになり、東大の有馬先生がキャップとなり、信州大学で実験を行った。それは阪神・淡路大震災の前の92年から始め、震災の時には実験が進み、乾燥材がよいというデータができつつあった。しかし、権威者から、乾燥材がよいというお墨付きをもらっても木材業界は良さがわからなかった。乾燥材がよいということがわかってもらえたのは、震災が契機になり、大手の住宅メーカーから乾燥材の注文が入り、増えていった。次に増えたのは、品確法であり、現在につながっているというのが実情である。現在も乾燥平角が非常に伸びている

次に始めたのがプレカットで、住宅はプレカットであるということはわかっていたが、当社の顧客がプレカットであるので躊躇していた。プレカットメーカーに聞いてみてもプレカットのわからない面があり、自分でやらなければと思い始めたが95(平成7)年であるプレカット工場を本社に作り、1ラインが3ラインと次々に増えた。1号機のプレカットラインは増設に伴い3回移転させたが、プレカットはやはり一箇所で沢山生産した方が合理的であると思っている。現在、3ラインで今月は18千坪程度の生産である。プレカットが現在の軸組構法の質を向上させ、コストを下げるのがプレカット時代ではないかと思っている。

次に始めたのが集成材である。やはり、集成材時代ということを感じたし、製材して側板が、垂木、桟木になるわけであるが、住宅の工法の変化ということもあり、これが売れなくなってきたということがあった。そのようなことから、集成材のラミナにすればよいので、集成材に入ったのが97(平成9)年である。

それから、木材乾燥事業(ドライビーム)も顧客の求める需要に常時対応できるよう、販売量の3倍の在庫能力をもってやっている。2000(12)年には乾燥釜が430基(1基=ドライビームで60m3、ラミナで40m3に換算)となっている。その間、蒸気で圧力をかけるスピドラ、高周波、除湿、遠赤などいろいろな乾燥装置を試したが、普通の蒸気式の乾燥装置がベターで後は、全てスクラップした。現在、乾燥釜が430基で年間60万m3の乾燥ができる体制でやっている。乾燥事業も後3年くらいするとほとんど設備償却(リースと特別償却の早いものを使っている。)がなくなるので、かなりのコストダウンになる。この間、乾燥事業にかけたコストは160億円程度であり、累損は40億円に達するが、今期は少し戻しているし、来期はかなり戻す予定であり、償却費が少なくなるにつれ戻してくることになる。40億円の損をしながらも投資したことがよかったと思っている。それに、お得意先が軸組業界であり、軸組業界なくして中国木材はなし。軸組業界は、プレハブやツーバイフォーと大変厳しい販売競争をしているので、乾燥材、集成材、プレカットの3点セットで軸組みが他の工法に負けないようにしなければならないということで、次々に投資を重ねた
2001年には、土地を8700坪購入し、東海事業所でプレカットを始め、今月は1万坪を超える体制になっている。本社も18千坪なので、28000坪のプレカットのメーカーになっている。

昨年は名古屋に借地込みで土地を2万坪購入し、これも接岸できる港を自社で造った。
今月は、次のプレカット工場の建設に入り、9月には完成する。
昨年は、九州の伊万里に4.5万坪の土地を購入し、自家用バースを作り、4月に物流センタ−を開設し、集成材工場を現在建設中である。これは、スギとベイマツの異樹種集成材(ハイブリットラミナビーム)で、スギを本気でやっていこうと考えている。しかし、考えてみると合理化、コストダウンは環境に貢献し、イコールであると考えている。環境に結びつくから黒字経営に結びつくと感じている。

次に当社の過去の44期からの製材量であるが、前期(50期:2002.7〜2003.6)は本社工場で1,627千m3の丸太を製材している。岩国のマルホは以前は子会社であったが、現在は完全に独立し、販売は別になっているが、丸太は当社が供給しているので、合計すると1,778千m3の盤台石(新農林JAS)で、米材の輸入統計とは違っている。このように製材量が伸びてきている。今期もかなり延びる予定で、6月は153千m3、7月は160千m3弱となっている。ほとんどが2シフトの生産体制である。3シフトもやったが2シフトが一番いいようである。2シフトは環境にも貢献しており、同じような工場を2つ作って、1シフトでは、工場を作るために大きな投資が必要で、これも炭酸ガスを排出して、鉄を作り、コンクリートを作り、工場を作ることになるので、環境に貢献するためにも製材業は2シフトでやるべきで、1シフトでは環境に貢献できないと思っている。

グリーン材は減少し、乾燥材がどんどんと増えてきている。前期は、393千m3、今年は500千m3になると考えている。集成材も伸びていて82千m3今期は100千m3程度が見込まれる。
乾燥材(乾燥材+集成材)比率は伸びてきており、50期で49.9%、現時点では55%に近づいており、乾燥が好調であるので、今期は55%を超えるものと思われる。プレカットも269千坪に伸びてきている
売上げは、原木を岩国に30億円ほど売って、530億円の売り上げとなっている。このようにドライビームの乾燥材、ラミナビームの集成材、プレカットがものすごいスピードで44期から50期の6年間で如何に早く木材業界が変わったか、この数字をみると理解できるのではないかと思われる。それだけに投資に次ぐ投資の連続であるので当社は借金が多いが、環境に優しい経営をやっているので黒字経営を続けている。
今まで赤字となったのは、チップを始めた初期と、北洋材の1975(50)年の決算、45期(98年6月)の売上げが下がった時に20億円ちかい赤字を出しているが、それ以外は黒字である。

赤字となって、日本の税制が如何にひどいと感じたのは、「留保税」である。45期が20億円の赤字であったので、46期は繰越欠損のため法人税はかからないと思っていたが、2億円の留保税を取られた。45期に粉飾して赤字の一部を46期に持ち越せば2億円は不要であったという事である。粉飾すれば有利であるというような税制はおかしいし、オーナー経営に厳しい税制となっている。株式の売買にしても我々に不利な税制となっている。オーナー経営を潰すと日本の明日はないとも言え、日本の経済はますます悪くなると思われる。悪くなっても何とか生き残っていかなければならないと思うわけである。

2.住宅用木材の変化

資料の2.1に国産材素材の生産の推移があるが、この20年でアカマツ・クロマツが22%に落ち込んでいる、このおかげで、ベイマツ製材が成長したと思われる。このような中で、カラマツは植林木の時代がきていることから増えている。スギも85%とマイナス幅が少なくなっている。したがって、スギの仕事も考えていこうとしている。

米材丸太をみてみると、ベイマツは90年は80年より増えているが、2000年は80年と比べて61%しか入っていない。米材の原木問題は大きな転換点になっている。ツガにいたっては、11%になっている。ベイマツがベイツガにならないように努力しないと当社はないということになる。ベイツガが何故このように落ちたのかとうと、住宅が和風から洋風に、ベイツガ製材で儲けられたのは、敷居、鴨居、柱も一方とか三方無節とかの役物で儲けられたが、その価値がなくなったということにある。乾燥ができなかったということもあったということがあったといえる。

従って、ベイマツがベイツガにならないように、毎日、真剣に考えている。
それから、如何に集成材や輸入集成材、欧州の集成材が増えたかというと、2.3にある通り、国産の集成材が95年と比べると2002年は4.5倍とものすごいスピードで伸びている。輸入の集成材も全体で3.5倍欧州からの輸入集成材に至っては12倍欧州からの輸入製材品も約3倍となっており、大きな変化が早いスピードで起きているのが木材業界である。
今後ともまだ変わると思われ、対処しなくてはならないと考えている。

3.グリーン材時代から乾燥材集成材時代へ

グリーン材時代から乾燥・集成材時代に変わったということは確かである。この問題は大きな問題で、例えば、グリーン材では父ちゃん、母ちゃんの製材が北米の合理化工場に勝った。如何に合理化工場にも勝てた。何故かと言うと、北米で製材して、船に積んで、日本に持ってきて、顧客のところに届くのは3ヶ月かかった。もう古材に近づいているわけである。古材になると、製品は二束三文である。従って、輸入材を扱って利益を上げた人はほとんどいなかったという話である。では、何故、北米からあれだけ製品が入ったかというと、これは保護貿易ということがあった。グリーン材の時代は、北米の合理化工場に木材業界は大きく勝ったが、しかし、現在は乾燥材・集成材の時代である。これは、国際大競争時代に入ったということである。製品は3ヶ月たっても変化しないので、まともな競争になる。

日本の人件費は欧米より高い、為替も大きく影響するが、製材するだけだと、当社の場合、1,391円、集成材で9,397円の人件費になる。集成材時代になると人件費の高さというものが非常に響いてくる。只、当社の集成材は歴史が浅く、生産機械は一流であるが、人が未だ、一流になっていない面があるので、育て育てやっているが、半分以下にはならないと思うが、製材と集成材とでは人件費の差がある。

製材のコストはまだまだ下がる。乾燥材・集成材ということになると土地が必要になるが土地が高く、これも負担になる。人件費も土地も下がりつつあるがまだまだ高い。

為替もからんできて、ドルが安かったのは、95年4月の79円75銭、ユーロが安かったのは、2000年10月の88円93銭、ユーロは99年1月に誕生し、人気で135円であったが2000年10月には88円になった。その間、僅か1年と10ヶ月、135円のものが88円になると、100円のものが70円、これではレースにならず、当社も倒れるのではないかというくらい欧州の集成材にやられた。ドルも79円のものが3年後には147円をつけた。これは大変なことである。現在は、ユーロが弱かったものが強くなっているので、欧州との競争は現時点では有利になっている。

しかし、欧州の製材・集成材メーカーは世界をまたにかけるメーカーなので、バルト三国や東欧に工場を持っていったり、ロシアにも作るということになる。こういった国は、通貨が安く、人件費も1/5程度である。近いうちに攻勢に出て来る可能性があるので、その準備をしておく必要がある。世界との競争になるとと為替の問題があり、それは大きく変動する。当社も為替対策として、外銀のディーラーを8年前に入れている。ということで、為替もにらみながらの商売となっている。

加えて、フレートとの競争がある。あれだけ安い集成材が入ってくるのは、フレートが安い、コンテナが安くなっているからである。コンテナが何故安いかというと、中国は世界の工場といわれるくらい、世界に出荷され、ほとんどがコンテナで出荷される。コンテナは2千個時代からあっという間に8千個時代に入った。荷があれば船会社はコンテナを大きくする。そうするとコストが下がる。船の場合、倍になるとコストは65%程度とみてよい。つまり、倍にすれば100の運賃が65になる。それが4倍になろうとしているのでさらに安くなる。コンテナは箱を持っていくわけなので帰りは空になり、荷が無くてももって帰らなくてはならない。極端にいうと帰り荷のコンテナはコストはゼロであるので、欧州からのコンテナはそれに近い。欧州からの集成材が入ってこなくなるということを想定すると、中国が自国で消費する。東欧、ロシアが中国用の製品を作るというケースになると持っていく荷と帰り荷がバランスする。そうなると欧州からの集成材はべらぼうに運賃が上がる。しかし、ここ当面は、欧州からのコンテナ運賃は安いということを考えながら、欧州からの集成材と競争しなければならない。

電気代も高い、当社の場合、製材するための電気料金は200円/m3、ドライビームが650円、ラミナビームが1,800円であり、電気料金のコストが高く、条件が悪い。それを考えながら、我々は残っていかなければならないというのが実情である。

従って、製材、集成材の輸入関税がなくなると日本の木材加工の生死に関わることになる。是非とも維持しなければならない。米国、カナダは保護貿易をやっている。州有林は丸太輸出禁止、国有林も丸太輸出禁止をやっているので、このことを武器にして現在の関税を維持しないと、日本の乾燥、集成材は非常に厳しい競争になる。人件費を始め何をとっても条件が悪い。

乾燥、集成材が伸びているからうまくいっているところが多いと思われるが、需要が少なくなり80%、70%になると本当の裸の競争になり、集成材業界、製材業界は厳しい状況になるので、今の関税は死守しないといけないと考える。

グリーン材には戻らない。今後とも乾燥化はますます進む。今、乾燥材のドライビームが売れている。何故売れるのかというと、税金で年末までに住宅を建てれば利息に対する税金控除がある。シックハウスの問題で、集成材から一部、乾燥材に還ってきているような気がする。加えて、価格の面で一時、ドライビームと欧州の集成材の価格が集成材の方が安かったことがあり、当社の製品価格を死ぬ思いで下げたことがあったが、今、ドライビームがかなり安くなっている。

また、例えば、呉市を考えた場合、10社の工務店があったとすると、1社はドライビームを使うが、9社は昔からグリーンを使っているのでグリーンでいいというところが多い。中には、今の代で先が無いので工務店を止めるので、一円でも安い材を使うという方もある。一方、乾燥材を営業の武器に使うところが3社に増え、さらに5社に増える可能性もある。そうなると、点→線→面になり、グリーンではどうしょうもないので乾燥材を使うということになる。乾燥材は面の時代に入ったのではないかと思われる。

税制は将来の先食いでマイナスであるが、面の時代、シックハウス、単価の問題ということになると未だ、追い風が続くのではないかと考え、一生懸命増産している。乾燥炉はこれ以上増やそうにも増やす場所がないので、増やさないが、天乾と人乾との複合乾燥を一部やりかけている。天乾をすることで、乾燥炉に入れる時間を短縮する。季節にもよるが、4〜5ヶ月天乾させると、乾燥炉に入れる時間は半分以下でもよくなる。ただ、割れは増えるが性能には関係しないので、例えば、5万m3天乾すると、乾燥材は7〜8千m3増産できる。現在、天乾は2.5万m3積んでいるが、いずれ6〜7万m3の天乾を行う予定である。幸い、工場の隣に市の用地があり、そこを一部使わせてもらえるので、その様な乾燥を考えている。

4.製材業は物流業

製材業は歩留まりなどを考えると別であるが、加工の手間としてはそれほどかからない。物流コストは、米国での丸太の船積→海上輸送→日本での荷卸→原木ヤード保管→工場→製品保管→全国の配送センターに内航船で輸送→配送センターでの製品保管→顧客への配送という形であるが、48期での製材コスト(丸太換算)は2,314円/m3であがっている。物流コスト(丸太換算)は5,784円で2.5倍となっている。物流コストが如何に大切であるか、このコストを如何に下げるか、まだまだ下がるが、如何に立地が大切で、物流コストが大切であるか、製材コストに比べ物流コストは2.5倍であるので如何に重要であるかが理解される。立地がよければ、物流コストが合理化でき、それだけ環境に貢献する。

例えば、当社は、3万t〜4.7万tの船を6隻運航させているが、47型の船の一港積の一港降しでは、米国から呉港までの燃料コストが14.7リットル/m3(帰り便は空のためその燃料分も入れている。)の燃料である。20年前は18型で27.5リットル/m3であるので、大型化により半分近くの燃料になっている。大型船を使うことは環境にもプラスであり、コストも下がる。

47型を導入する際、周りの関係者から、大型船を造ってどうするという疑問の声があったが、やってみると大正解で、3.2万tの船の15%はコストが低くなっており、未だ、このコストは下げられると思っている。如何に物流コストが大きいか、3.2万t→4.7万tの船にすると、年間1〜1.5億円のコストダウンが可能となると思われる。これは一港降しであるが、2港とか3港になると効率は1割とか2割落ちることになる。一港積みの一港降し、大型化がコストダウンになり、環境にも貢献することになる。加えて、自家用バースは土場に降ろした際は、土場で植防をして、直ぐに工場に入るし、本船薫蒸したものは、三分の一は工場直結で貯木場に入れることなく済むので、フォークローダ等荷役機器の使用も半分で済み、その燃料消費も抑えられ、コストダウンと環境にも貢献する。

製品輸送で当社は82%が海上輸送で、全国の物流センター(仙台、東京、静岡、名古屋、大阪、岡山、伊万里)に運んでいる。東京行きの船では2,500m3を積む、この燃料が4.3リットル/m3(片道)、帰り荷が空ということになると8リットルになる。しかし、米国から14.7リットル、国内でも8リットル(2,500m3積)なので、大型船が燃料を節約することがわかる。

20tトレーラーで30m3積んだとして東京まで運ぶと20リットル/m3の軽油が必要になるので、船舶は1/4〜1/5の燃料で運べる。また、船舶で運ぶメリットは、4〜5人の船員でよく、30m3積みのトレーラーに換算すると83台分(83人の運転手)になるので、環境面でもメリットがある上、人件費の削除という面でも大きなメリットがある。

物流センターから顧客の庭先までジャスト・インタイムに運ぶことが可能で、物流センターを作ったメリットがあった。

今後は、さらに、自家用バースを建設し、大型物流を推進する予定で、一昨年は、東海に用地を購入し、昨年は、名古屋と伊万里に購入した。物流センターは降ろしたものを直ぐにフォークリフトでトラックに積込んで運ぶというスタイルを考えることによりコストダウンと環境に貢献することにつながる。

物流センターからは、邸別配送ということで、何をどれくらい、何時に届けるという注文が増えてきている

5.今後の展開、更なるコストダウン

今後の展開は、当社の製材部門はこのところ大きな投資をしていない。世界の製材を見てみると、欧州ではどんどんと合理化が進展し、米国では、当社の材の輸出港であるタコマにシンプソンという会社が、4枚鋸のクワッドソーとスウバーで6枚鋸でトコロテンでやっている。世界の製材工場は大型化に向かっており、それは何故かと言うと、12mの丸太を60mのスピードでスキャナーに通すとすると10cm毎に輪切にして形状を認識する。その誤差は2mmで、曲がりがどこでどう曲がっているかも瞬時に認識する。ベテランの製材工が35cmの丸太の末口だけを一瞬に判断できるのは2cmであるといわれている。2cmと2mmとでは競争にならない

日本では2枚鋸のツインバンドであるが、6枚鋸の時代に入っている。それが、当社の丸太の積出港のタコマにできたので、丸太の買い入れ競争が熾烈になる。製材の合理化はやらざるを得ない。

現在、プレカットメーカーに行くと、短材が沢山目に付くが、プレカット用の長さのものができればそれが歩留まりに表れてくる
今のスキャナーでチックすれば、例えば2.75m、3.65m、4mの材を自由自在に作れることになる。そういう工場を作らないといけないのではないかと思われる。
歩留まり、生産性については現在、当社は20m3/人・8時間であるが、80m3までいくのではないかと想定している。

電気代を節約しようと思うと、集塵を空送は一番電力を消費するので、ベルトコンベアやチェーンコンベアに変えるべきである。米国の工場も2階建てになっており、2階から1階に自然に落下したオガをチェーンコンベアで集めていく形であるので改善する余地がある。
加えて、2シフト3シフトにすべきで、当社も関東地域に用地が確保できれば直ぐにでも対応できるよう準備を進めている。

製材で負けた場合、将来はないと考えている。乾燥事業については、基本的に償却が終われば、かかるコストは、電気代と蒸気代であるので、自家発電で電気を取り、廃熱で乾燥するシステムが競争力があると思われ、オイル焚は先がないと思われる。早く、その様なシステムを組み入れていかなければならないと考えている。当社の場合、本社と郷原工場は13km離れているが、郷原工場に2660kWの自家発電施設を整備し、本社から樹皮を運んで燃料としている。しかし、13km離れているので、一日に15tダンプで15回運ぶとその運賃は10万円を超えるので、月に300万円かかることになるので、その改善のために、郷原で古材の回収業もやり、05年は本社で5千kwの自家発電をやることを計画している。それにより、バーカーで発生した樹皮は直接、木屑焚きボイラに投入することになる。樹皮やオガ粉を横もちで運送するよりもメリットがある。当初は設備投資コストがかかるが、トータルではコスト回収が可能と思われる。

バイオマスということで、脚光を浴びているが、RPS法(「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」=新エネルギー等のさらなる普及のため、電気事業者に対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより新エネルギーの利用を推進するもの)により、電力会社の協力体制も変わってきている。

一方、最近、木質ペレット生産施設が各地で計画されているようであるが、これは実らない事業ではないかと思われる。何故かと言うと、炭を焼いたときに感じたのは、炭を焼いてオイル並みのものを造っては絶対に採算があわない。活性炭などは別な機能を持つものは単価が変わるのでいいが、ペレットではなく、炭に焼けば可能性はあると思われる。新聞に中国からの輸入炭を制限する旨の報道があったが、ペレット化し、暖房に使用するとかは、器具も高いし、採算が合わないと思われる。

PDFというごみを固めて燃料にすることもばかげており、税金の無駄使いである。ごみを輸送費をかけて集めて、乾かして、プラスチックとあわせて固めて、それを発電所に持っていって焼くというのは、環境問題からしてもプラスにはならない。むしろ、ごみは直ぐに焼いたほうがいい。例えば、最近、四国電力が樹皮などの木屑を石炭ボイラで混焼することは大正解であると思われる。ボイラは大きいほど効率がよいので、山の森林資源も石炭火力と組んで、手間をかけず、ボイラで焚いて電気を取るやり方のほうがいいと思われる。

ボイラは如何に規模が大切かということを例示すると、伊万里に異樹種集成材を生産することで進めているが、10tボイラと20tボイラの見積を取ったところ、20tボイラが10tボイラの1.25倍の価格であった。ということは、62.5%のコストで、100円のものが62円でできることになる。運転も同じ人数である。何故このように差があるかというと、船と同じ原理で、面積が立法になるので3乗になる。縦・横・高さを倍にするには1.25の面積で倍になる。20tのボイラは自家発電ができるボイラである。

このようなことから如何に乾燥事業は規模がほしいかということになる。それと、ベイマツ集成材のラミナビームは、強度からするともったいない。当社のラミナは側板だけでヤングが130ある。130の価値を認めてもらって買ってもらえればいいがそうもいかない。そうすると、ベイマツでは150、170を造っていくことが必要になる。節を除いて、表しで造れば非常にいいものができるので、そのようなものを造っていこうというのがベイマツの集成材の考え方である。

しかし、今からは、スギとベイマツとの集成材であり、当社の次の大きな仕事である。それを伊万里でやることとし、3万坪の用地を予定している。ボイラも20tの20k圧のものを契約しており、04年3月には運転を開始する。建屋は平屋であるが7.5千坪で、04年1月か2月に完成する。その他生産設備も購入済みなので、04年春には稼動する予定である。スギを使うということで補助金も検討したが、制約もあるので全て自力で立ち上げる。この異樹種集成材は99年から研究を始め、02年には異樹種集成材のJASを取得している。スギが60%、ベイマツが40%の割合であり、スギがヤング率50〜70、ベイマツが130で、ヤングは105の平角はいくらでもできる。しかし、異樹種集成材はJASの改善が求められる。例えば、集成材はラミナの厚さが一緒で無ければならないということがあり、製材する段取りが悪くなり、コストがかかる上、歩留まりが落ちる。というのは、スギにはスギに向く厚さがあり、ベイマツにはベイマツに向く厚さがある。スギの側板はできるだけ薄くしないと歩留まりが落ちてしまう。その様な点から、厚さに関係なく、できた製品がヤングの105あればいいということにしないと生産上の問題が生じる。今後、研究をして改善を要請していきたい。

ベイマツのドライビームの第1号のJASを取得したが、これもヤングの110だけである。そうすると、ベイマツのヤングは70〜200位まである。150のものも110となるのでもったいない。それと、資源の有効利用のためにはヤングの100以下のものも造りたいが、JASのヤングは20とびになっており、90、110、130……になり種類が増えてしまう。そうすると、110を基準として80と140の3種類にしてもらえればドライビームは全てJASが取れる。そうなると、ベイマツの平角は3種類のヤングの製品をジャストインタイムに供給することが可能となる。このようにお願いしたい。
スギのヤングの40、50、60のものでもベイマツの130を合わせれば、ヤングの105の製品の生産が可能となる。

当社の生産量からすると、側板を有効に利用することができれば月間5万m3の異樹種集成材ができる。この量を生産するために必要なスギの量は、丸太からの歩留まりを30とみるか35%とみるかによって変わってくるが、年間60万m3(月間5万m3)の製品を造るために30%の歩留まりとすると150万m3、35%とすると129万m3のスギ丸太が必要になる。ベイマツのラミナ板は既に準備できている。

九州の山や製材工場に行ったりすると、山で非常に木材を粗末に扱っている感じがする。例えば、傷材はラミナにするのであればその部分だけカットして使えるが、実態的に山に放置され自然還元されている。曲り材にしてもその処理に困っている地域が多いく、3割程度あると聞く。02年のスギの丸太生産量は686万m3なので、その3割の206万m3の曲り丸太があることになる。それを異樹種集成材に活用することを検討している。
そのため、伊万里で成功させ、成功するためには、大型工場で電気も熱源も低コスト化し、加工コストも低くできれば可能性があると見ている。それが成功すれば全国展開をしたいと考えている。

当社は、全国に製品を買ってもらっているので、帰り便でラミナを集めること。当社でスギの製材をやるつもりはないので、全国の方々に協力を願って、曲り材・欠点材を有効に利用していただき、そのラミナを集めたい。例えば、名古屋に物流センターがあるが、そこから製品をトラックで三重、福井等に行くので、その帰りにラミナを買って帰る。帰り便なので、燃料負担がかからない。あるいは、広島県からトラックで島根県に製品を運んだ際に、帰りにラミナを買い集めてくることもできる。
その様なことを考えると、スギとベイマツの異樹種集成材は将来性があると考える。従って、当社の次の事業として命をはってでもやっていこうと考えている。その時は、120万m3〜150万m3の曲り材・欠点材のスギ丸太を利用していくことになる。

プレカットは次のプレカット時代が来て、これも進化していく。手刻みとプレカットでは競争にならない。品質・コスト・納期・コスト・情報全てを持っている。屋根屋さんが屋根に上がって、プレカットか手刻みの家かは直ぐにわかるといわれている。ということは、手刻みの住宅は特殊なものを除くと、品質面で問題がある可能性がある。宮大工のようなコストが関係ない世界などがあり、それは木のくせを一本一本見て使うのでプレカットよりも上であるが、一般住宅ではプレカット時代ではないか。プレカットも大型化に再編成されると思われる。当社は、キャドデポ方式でできるだけ多くの方々にプレカットに参加してもらうために、CADを皆さんの所に届けて、その末端の仕事を取っていただき、当社はその加工を下請けし、プレカットしたものをジャストインタイムに収めるものが、当社のキャドデポシステムであり、これを続けていくことをしたい。
また、プレカットの品質を上げることにより、最終的にはプラモデルを組み立てるがごとく、軸組工法住宅ができてくるようにしたい。軸組工法は大変素晴らしい工法であるが、未だコストは下げられる。

それと、物流はまだまだ合理化の余地がある。回収ビジネスも始めたい。どこにいってもごみの処理に困っている。プレカット工場に行くと、短材、ビリなどあるので、短材も乾燥・集成においては、フィンガージョイントでつないで、間柱を造るなどの方法がある。糊がついていないものは製紙用チップ糊がついているものはボード用のチップなにもならないようなものは自家発電用燃料というように、これを当社の製品を買ってもらうところから、燃料負担のかからない帰り便でもって帰ることをすると、競争力が違ってくる。同時に環境にも貢献する(帰り便は空でも燃料消費がかかる。回収材を積荷して帰る。)。得意先が住宅の建て替えを請け負った際に、解体材として古材がでてくるので、それまで含めてもって帰ることを検討したい。沢山集めることにより自家発電効率はよくなってくる。5千kWよりも1万kwの方が効率がよいのでコストを下げていき、顧客にも喜んでもらえる。

トータルで製材から乾燥、集成、プレカット、顧客への配送、ラミナや木屑の回収までコストを下げていくことが大切ではないかと考える。次は植林・育林まで行けばさらによいが、現段階では、そこまでの企業体力がない。

6.21世紀は地球環境の時代

21世紀はCO2、環境問題ということで、如何に炭酸ガスを森林で吸収し、その森林からの木材を製材、乾燥材、集成材、プレカットで低コストな軸組構法を造ることが重要ではないかと思われる。環境によいといっても低コストで造らなければならないと思う。そのため、トータルで生産システムを組むことをやれば、まだまだ木造軸組構法は伸びていくと考える。

昔は殆どが在来軸組であった、それをプレハブやツーバイフォーにとられている。新設住宅の着工戸数が落ちてくるので、シェアを奪い返さなければならない。奪い返す道は、トータルで考えればあると思われる。コストを先ず下げること、軸組は環境によいということ、健康住宅に貢献することが揃えば我々は奪われた市場を取り返すことができると考えている。それだけの夢をもって取組んでいる。そのことにより、在来軸組構法住宅が繁栄すれば、木材産業は21世紀の素晴らしい産業であると夢をもってがんばっていこうと考えている。

 

〔質疑〕

Q 伊万里でスギの集荷を考えているということであるが、着値でどれくらいの値段であれば採算ベースに乗るのか。

A 27,500円/m3(工場離れ)であるが、多少損をして購入してもいいのではないかと考えている。それと、将来も続けていくためにもコストを下げてほしいということ、できれば曲材・欠点材を山から直接現金引換えで買うようにしたらどうかということ、そのためにはラミナの納入の際、現金で代金を支払ってもよいということ、ラミナを天乾(含水率の低下と輸送コストのダウン)をするなどを要請している。未だ、コストが合うような値段でないようであるが、当社も当初は損をしてもよいと考えている。今までにも乾燥で40億件の損をしている。しかし、40億円の損も今後、設備の償却が進むにつれ返してくるので、花が咲いてくる。異樹種集成材もその様になるのではないかと思っている。

値段はお互いにコストをオープンにして話し合い、お互いにコストを下げながら決めていきたい。伊万里の場合は、市場と製材は一体であるとして、伊万里木材市場に置いている。市場に入る材で高く売れるものは市場で販売するというシステムができる。市場が製材を兼ね、製材が市場を兼ねる形が、将来いいのではないかと考えられる。

当社では、スギの製材はやらないが、今までの経験を伝え、お互いに異樹種集成材を成功させていきたいと考えている。

 

Q 将来的に北洋材など外材の丸太輸入はなくなり、国内での製材は国産材しかなくなるのではないか。また、製材機械についても技術的な進歩があまり進展していない話を聞くが、先ほどの話の中で、外国に負けない製材があるべきとの話があったが、その点はどのように考えるか。

A 関税が北洋材の製品は4.8%である。製材そのものは4.8でできるのではないか。今のままでは競争力がないが、港に入ったものをトラックで運ぶというようなことではなく、港から始まって合理化をすれば、十分競争力があると考えている。

 

Q 住宅の構法に触れているが、今のプレカットは手刻みの加工を機械加工に置き換えてやっていて、合理的化の面ではロスがあるように思われ、機械加工に向く形の構法が考えられるが、そうなると住宅生産まで展開されるのか。

A 住宅は一切やらない。しかし、プレカットはまだまだ進化する。最終的には、プラモデルを組み立てる様な在来軸組になればよいと考える。

内装もはめ込み、あっという間に、軸組構法が建てられるようになることを考える。そのためには精度が必要になり、乾燥、集成、プレカットになり、途中のコストも引き下げていく余地も残っていると思われる。
それと、プレカットの適正配置、規模でのコストダウンなどいろいろあると考える。

 

Q 東南アジアの中国に対する戦略はどうか。

A 中国への製品輸出競争力はないので、一切やってはいけないことである。中国の方が人件費が安いし、ロシアからも入る。中国から、ロシア材を加工して、日本に入ってくるということは、節を丁寧に落とした手間のかかる内装用の集成材のようなものは日本では勝てないので、中国から入ってくると思われる。しかし、平角、集成材までなら、関税と全体のコストダウンにより、何とかなるのではないかと思われる。

中国へのスギの輸出の問題があるが、日本は世界の輸入国であり、中国は世界中から買える。補助金でやっているのであれば、むしろ、異樹種集成材に力を入れた方がいいのではないかと思われる。

スギが13,000円で中国に到着というようであるが、アカマツと比べた使い勝手や加工度からすると、補助をだして、将来が見えるという確率はかなり低いのではないかと考える。それよりは、別な方向を考えるべきでは内科と考える。

 

〔キーワードとコメント〕

環境重視は黒字経営につながるという仮説を中国木材の経営戦略とその実践の中で検証し、それを証明している事例でもある。

当初は、樽からスタートしたが、時代の変遷とともに、日本発の工業木材チップ→製材(北洋材→ベイマツ)→木材乾燥→集成材→プレカットと産業分類の木材・木製品製造業のカテゴリーの中で高次加工に展開して行った。
また、木材でも鋼材でも素材産業は、生産と同時に重厚長大であるため物流コストの削減が事業経営上極めて重要であるが、木材輸送の場合、トラック事業者への委託輸送が主体的であり、帰り荷的な運賃料金が適用されている面があるが、過積規制、ジーゼル規制等の安全・環境規制によるコストアップは今後とも増大していくことが予想されているところである。それに対して、自ら、船舶・港湾設備に多額の投資をして、船舶による拠点間直行輸送する体制を整備し、物流コストを劇的に引き下げたことは重要な意味を持つ。

輸送→物流にシフトしているが、各地の木材物流センター、プレカット加工センター、CADデポがネットワーク化されることにより、ロジスティクスの視点で、自らが、顧客の購買代理店化し、生産情報にフィードバックさせ、双方向に機能するクイックオーダーエントリシステムが構築される可能性を秘めている。
このネットワークは、木質廃棄物を廃棄物にしないで、再資源化させる木材の資源循環システムとして機能する可能性もある。

いずれにしても中国木材が自企業を取り巻く経営環境の変化を多角的に分析し、試行錯誤の中で新しい考え方により次のステップに進み新たな収益の大黒柱を築くという経営革新を行っている。従来の大黒柱は、時間の経過とともに価値が低くなり、いずれ賞味期限を迎えるものであるが、収益を出している間に、新たな柱を建てるために集中的に設備投資(健全な赤字)をし、時代ニーズが熟すにつれ、それが次の大黒柱として企業経営を支える。木材・木製品製造業という産業分類の中では、平成13年と昭和55年を比較すると業種全体で、54.6%、一般製材業34.3%、合板製造業40.1%、木材チップ製造業31.6%と大きく衰退している。しかし、建築木製組立材料製造業(プレカット等)は187.4%と成長している。木材・木製品製造業の中でもカテゴリーによっては大きな差があるものである。

また、業種が衰退していても、企業展開によっては、徹底的なコストダウンを図り、寡占化展開によるシェアアップや加工とデリバリー機能を高度化させ、サービス化の要素を加えることにより、製造業からサービス産業にシフトして、経済のソフト化に対応した展開を図るところもある。
持続的な革新の繰り返しにより、現在の姿になっている。多角化というよりも木材の「多柱化」展開とも言える。

それがあるのは、堀川社長がトップとして、常にこれでよいのかと、客観性をもち、考えて、考え抜いた「基本的な考え方」に基づく、企業ビジョンと戦略、戦術が機能して実現しているものと思われる。正に、リーダーシップ、アントレプレナーシップにより企業を正しい方向に向かわせ、次に、マネージメントにより、その方向に的確に到達していく企業展開であるといえる。

  • 基本的な考え方と信念と情熱
  • 常にチャレンジ精神
  • 知恵や知識のノウハウのない「多角化」よりも専門知識が活かせる「多柱化」
  • 貴方任せではなく、自ら仮説を立て、検証・実証する
  • 失敗した場合、その原因を分析し、次のチャレンジに活かす
  • 経営の結果を他人のせいにしない
  • 時代の変化にあわせて企業を革新
  • モノづくりの革新と同時に物流革新
  • 経済のサービス化(もの→時間消費型の産業構造)に対応
  • 顧客満足度の向上
  • 木材企業のオリンピック選手として優位を保つ
  • マネージメントよりも先ずは、リーダーシップ、アントレプレナーシップによる正しい経営指針

 

PDFファイル添付資料(PDF文書)

  • 中国木材の沿革と事業展開
  • 住宅用木材の変化
  • グリーン材時代から乾燥材・集成材時代へ
  • 製造業は物流業
  • 今後の展開・更なるコストダウン

 

 

全木連webトップへ