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林野庁、全国森林組合連合会、間伐推進中央協議会では、平成１５年３月１８日、「森林整備ワークショップ2003」～みんなで進めよう森林整備～ を開催されました。
不充分な内容ですが概要を次のとおり取りまとめましたのでお知らせいたします。
〔文責：全木連・企画部指導課・細貝〕
森林整備ワークショップ２００３年
日 時 平成１５年３月１８日（火） 13：00 ～ 17：20
場 所 オリンピック記念青少年総合センター
概 要
- 「今、森林（もり）をめざせ！」の演題で、田島山業田島信太郎代表取締役（ＮＰＯ法人森づくりフォーラム理事）から講演があった後、
- 体験作業を通じた間伐の推進－鹿深「森っこスクール」の活動－ 鹿深「森っこスクール」連絡会事務局、滋賀県甲賀地域振興局田中文一郎森林整備課主査
- 和歌山県における森林整備の取組
和歌山県東牟婁振興局農林水産振興部林務課﨑山朋紀技師
- ゆすはら風森林づくり－循環の時代にむかって－
高知県梼原町産業振興課安尾優子林政係主事
- 新たな森林管理システムによる放置森林整備の取組
愛媛県農林水産部森林整備課山内俊作水源林整備係長
- 川上から川下までの異業種協同組合「ウッドストック」－ウッドストックの果たす使命は間伐材と地域材の流れ－ ウッドストック協同組合室岡賢一代表理事
- 林業と漁業の交流が生み出した間伐材漁礁 阿武町林業振興会白松博之副会長
- 木質バイオマス資源有効利用への取組について
大分県臼津関地方振興局林業課飯田和彦主査
からそれぞれプレゼンテーションがあり、意見交換が行われた。
- 最後に林野庁、沼田造林間伐対策室長から、ワークショップの集約があり、閉会した。
〔講演メモ〕
「今、森林（もり）をめざせ！」田島信太郎 田島山林 代表取締役
- 大分県日田市が出身で、昭和60年のプラザ合意の年に父、祖父が相次いでなくなり、林業を継いだ。ドルが一気に250円になり、林業の壊滅の始まりでもある。
- その後、森林林業を教えることを始めた。平成3年の8月に都会の子供に林業を教えた。その年は9月の台風で多くの風等木が発生したが、その被害の内容が知られていないので、東京に復旧支援の陳情にいったが、被害の状況はまったく知られていなかった。そのため、マスコミの取材には全て応じ、被害の球状を訴えた。台風の風倒木の処理は、山林経営者、トラック運転手、行政などあらゆる関係者が努力したのでうまくいった。
- 上津江村は、1300人程度の人口で、林業関係者は100名程度しかいない。風倒木の際も処理するための金も労働力も無い。福岡の方から助けたいので受け入れろとの話があった。作業が危険であるのでやりたくなかったが、大変な球状を訴えた手前、受け入れざるを得なかった。
- 森林ボランティアは、春は植林、夏は下草刈りのために大人と子供が4泊5日くらいでくる。
- 森林ボランティアの受け入れについて、地域の周りの人は都会の人が手伝ってくれることに対し、指導等のための労力に比べ生産性の問題があるので、断っていた。
- 昨年から地元の小学校の総合教育の一環として、地元の子供たちに林業を教えることを始めた。
- 一部に、森とか森林は捨て去るべきものとの概念がある中でであったが、若い人が毎年2回くるようになり、なぜくるのかその理由を考えた。自分たちの周りにある森林は価値があるのではないかと感じた。
- 大分県もグリーンパスポート事業の中で、鎌などの道具を買ってくれるようになった。来るのは大学生が多いので、3日前から準備をしたり、夜はレクチャーし、プロを10人とか5人に一人付けることになるので、自分たちでやったほうがいいくらいの業務量でもある。来ている人が慣れてくると、サブインストラクターをやるようになり、若干、効率があがるようになった。
- 林業の最大の問題点
- 国土の70％を守っている
- 林業とその関係者に基本的には所有者に任せている。
- 今までと違う観点から林業に取り組むような人材が必要。
- 木材収入に頼らない林業の形成が必要。速水さんがいろいろな展開をしているが、FSCは目的でなく手段である。
- 森林ボランティアはメリットがあるか。？ → 能率が低いが、自分達はいいことをやっているという意識が強くある。技術ランクは３つとか5つのレベルに分け、上位ランクは戦力にすればよい。正当に評価してあげればよいのではないか。
- 林業500年というが、500年以上続いている。林業と関係なく森を守ればよいということを気がついた。発想を変えることが必要。新しい人を山に入れることが重要。みんなで守る森林ということで、森林林業基本法の精神に結びつく。
〔プレゼンテーションメモ〕
１ 体験作業を通じた間伐の推進－鹿深「森っこスクール」の活動－ 鹿深「森っこスクール」連絡会事務局、滋賀県甲賀地域振興局田中文一郎森林整備課主査
- 滋賀県の甲賀地域で平成8年から、林業体験教室「淡海森の学校」としてスタートし、平成11年に県民参加の森づくりコースと小学生を対象にした森林環境教育コース「淡海森っこスクール」に変更し、見学から体験を主体にしたものにした。平成13年には一人一本の間伐として４校で実施している。
- 「森っこスクール」の参加者延べ人員は参加学校、児童数、先生、父兄がそれぞれ増えてきている。
- 肝心な学校の先生が林業のことを分かっていない面がある。
〔課題〕
- 林業をどう伝えるか、案内人（先生）をどう関わらせるか。
〔目標〕
- 一人1本の間伐
- 伐採した間伐材の利用
- 地域の人をまきこんだ活動
のために、間伐作業を楽しくすることを工夫し、小学校の総合学習の範囲のみでなく、地域の関係者が協力してくれる。若いときに山のことを記憶に残してもらう。それが地域に広がる。森林ボランティアにもサポートの支援。
Ｑ 森林の場所はどのようなところで、その経費は？
Ａ 生産森林組合の山、町有林、県営林で間伐が一部残っているところ、個人の山などであり、経費はほとんどかかっていない。普及員は県の職員。間伐はコストもかかっていない。
２ 和歌山県における森林整備の取組
和歌山県東牟婁振興局農林水産振興部林務課﨑山朋紀技師
- 平成12年度に和歌山県緊急間伐推進指針（5ヵ年対策）を策定し、地域林業の活性化、森林の公益的機能発揮のため間伐及びその利用推進を展開。
- そのため、緊急間伐「木の国」再生事業、高密作業道整備事業、緑の雇用事業を県単事業で展開。
３ ゆすはら風森林づくり－循環の時代にむかって－
高知県梼原町産業振興課安尾優子林政係主事
- 「環境」の追い風の中で標高1300ｍの四国カルスト高原に2基の風力発電を設置し、その収入は森林整備等に当て、「ゆすはら風」森林づくりを推進。
- 平成12年9月に「梼原町森林づくり基本条例」を制定。
- 「梼原町水源地域森林整備交付金事業」により、森林所有者に直接1haあたり10万円を交付したことにより、間伐が推進されている
- 持続可能な森林資源の生産と木材の付加価値向上のために、FSCの森林認証を取得して展開し、環境に配慮した森林から出された木材を使いたいという工務店と直接取引きをはじめたことから、木材の単価が下がっている中、認証材の販売単価が上がっている。
- グリーン購入を推進するとともに、都市住民とのエコツアーを実施している。間伐だけでなく、搬出された木材の活用が課題であり、公共施設には全て木造化を図っている。さらに、公共だけでなく、民需につなげるため住宅の助成を始めた。
- この助成は、町産材の利用促進を図ることを目的に「梼原町町産材利用促進事業」として、町産材利用住宅建設者に住宅一棟分相当の木材代金を助成するもので、最高230万円の助成を受けることが可能である。
- 新規林業労働就業者の育成のために、「梼原町新規就農林研修事業」として、Iターン、Uターン者の研修費用に助成をしている。
- 今後の課題は、町産材の活用のためにイメージアップを検討するとともに、搬出・流通コストのダウン等であり、平成１５年４月から、全国初の「森林環境税」を導入することとしている。
４ 新たな森林管理システムによる放置森林整備の取組
愛媛県農林水産部森林整備課山内俊作水源林整備係長
- 森林の整備に必要な施業が行われていないため、平成１２年度に「愛媛県放置森林管理システム検討委員会」を設置し、森林からの恵みを受ける全てのものが応分の負担を行い、公的管理組織が主体となって森林の適正な管理を行うシステムの検討を行った。
- １３年度は執行体制整備と財源確保を行い、１４年度からは、（財）愛媛の森林基金が公的管理組織となり、市町村の斡旋に基づき、森林所有者から10年間の管理委託を受け、強度の間伐を推進。
- 長伐期化と針広混交林化を図り、公益的機能が高度で持続的な機能が発揮される森林づくりを展開。
Q 森林所有者の中には森林を売りたいという希望があった時はどう対応するのか。
A 森林の所有権の移転については情報提供程度のレベルであり、森林を手放したいという希望があった場合、その情報を関係者に伝える。森林の売買まではやっていない。
５ 川上から川下までの異業種協同組合「ウッドストック」－ウッドストックの果たす使命は間伐材と地域材の流れ－ ウッドストック協同組合室岡賢一代表理事
〔コメント〕
上越地域は、農林水産省、国土交通省の連携の施策である優良田園住宅のアーバンビレッジや建具事業者が中心になって展開する協同組合の間伐材の手作り家具づくり、一種の森林認証材のラベリングである森林基金の展開など注目されるところであったが、メデアを活用したPRなどを積極的に行っているものの、理念が先行してスモールビジネスのレベル。救いなのは、民間主導による展開であること。地域住民が理解を示し、地域の財産を生かした木の街づくりに発展していくことを期待したいところである。
６ 林業と漁業の交流が生み出した間伐材漁礁 阿武町林業振興会白松博之副会長
- 間伐材の漁礁は異業種交流から生まれたもので、間伐材の利用について、漁協青年部の働きがけがあったことが実現のきっかけである。１基あたり２４千円程度の単価。このように単価が安くできたのは、漁協組合員のボランティア活動によるところも大きく貢献している。
- 間伐材漁礁は、立木型と井桁型があり、立木型は間伐した枝付きのもので、海に間伐材の森を造ることを狙ったが、沈設してしばらくすると倒れてしまう。井桁型は縦・横・高さが1.5ｍで、それに使う間伐材は、1.5ｍ長、10～20cm径のものを24本使用する。
- 間伐材の道路渡し価格（曲がり材も問題ない）は、１本（３ｍ長）300円で購入する。それを1.5ｍに玉切りし、井桁に筋交いを入れる。
- 実績は、H7年度26基、H8年度110基、H9年度120基、H10年度116基、H11年度118基、H12年度110基で、これまでに600基が沈設された。
- その他、間伐材の利用推進について、一般からアイデアを募集したりして、次の製品づくりに努力している。
〔コメント〕
間伐材の漁礁の事業費は、一基当たり3万円程度。それもボランティアによる労力等の提供があって実現している。年間事業費は300万円程度であり、ビジネスというよりも生業以下のレベル。
とはいえ、林業関係者だけでは、間伐材の漁礁への利用はあり得なかったこと、漁業関係者の連携による事業展開は、別な分野の異業種との連携による新展開に発展する可能性を秘めるものである。
７ 木質バイオマス資源有効利用への取組について
大分県臼津関地方振興局林業課飯田和彦主査
- 太平洋セメント(株)津久見工場は、林野庁の補助事業「平成13年度 木質バイオマス資源多角的利用促進緊急対策事業」（環境配慮型産業支援対策事業）を活用し、木質バイオマス資源利用施設を整備した。同制度を活用した木質バイオマス資源の利用は全国初。
- 「木質バイオマス資源利用施設」は、平成14年3月に着工し、同年12月19日から、本格稼動した。
- この施設は、木材をチップ化する木材破砕設備と、チップ化した木材をセメント焼成キルンに投入する設備からなり、投入した木材をセメント製造の燃料の一部として活用するもの。
- 本施設の稼動によりセメント製造の燃料である石炭の使用量を低減し、二酸化炭素の排出削減につながる。また、燃料として使用した後の灰はセメント原料となるため二次廃棄物の発生がなく、最終処分場の延命が図れる。さらに、間伐の推進により健全な森林育成にも貢献できるもの。
- 間伐材（曲がり材等を含む）は、１ｔ1万円で購入。→ 年間500ｔを上限（１０年協定）
- おが粉や製材廃材（チップ化してあるもの）は6千円／ｔの処理費を徴収。
注：製材端材は、粉砕していなければ８千円／ｔの処理費（破砕料金が２千円）
- 周辺地域の産廃施設での焼却処理費は、ｔ3万円程度。
＜施設の概要＞
（１） 稼動開始日 ： 平成１４年１２月１９日
（２） 工場名称及び所在地 ： 太平洋セメント株式会社津久見工場
大分県津久見市合ノ元町２－１
（３） 処理対象物 ： 製材端材、間伐材、根株、建設発生材
（４） 処理対象量 ： ２２，５００トン／年（予定）
（５） 設備概要 ： 木材破砕設備 処理能力２０ｔ／時
木材チップ投入設備 処理能力 ４ｔ／時
（６） 総事業費 ： ６６千万円（うち約２億２０００万円は｢木質バイオマス資源多角的利用促進緊急対策事業｣による補助金=平成１３年度林野庁補正予算）
〔コメント〕
太平洋セメントのこの工場の木質バイオマスの年間利用計画では、22,500tであり、石炭8,700tの使用削減につながるが、代替の割合は3％程度でしかない。しかも有料で受け入れる間伐材は年間500ｔ（500万円）→ 1,000m3程度
製材おが粉は、畜産農家に2,000円／m3 ＝ 6,000円／t 以上で販売されているので、周辺に需要がなく、横持ちコストが高い場合は、処理費を支払って処理することが検討されるが、その場合でもダイオキシン類測定が不要な50kg／時以下の小型焼却炉を使った自家焼却コストとの兼ね合いになる。
製材端材についても木材チップとして販売できるのであれば同様の問題となる。
バイオマスをエネルギー利用しようとする場合、既存技術の枠内では、熱効率や発電効率の点で大型プラントにした方が格段に効率がよくなるのが一般的であるが、必要量のバイオマスを安定的に一定レベルの価格で確保しようとする場合、問題となる。バイオマス流通の季節波動の問題もある。
バイオマスエネルギーは、ローカルエネルギーとして地域内の分散型のシステム利用を図る方がリスク分散が図れる。
木質資源バイオマス利用に向けては、小規模で効率のよい利用システムを開発することが必要と思われる。
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