木材産業のダイオキシン類対策Q&A

未定稿

平成13年12月

林野庁木材課

 
     
  Q1 ダイオキシンとは何ですか?  
 
  1. ダイオキシン類の発生とその抑制
     ダイオキシンは、ものの焼却の過程等で、自然に発生してしまう非常に毒性の強い物質です。環境中には広く存在していますが、その量は非常にわずかです。
     しかしながら、ダイオキシン類の排出量の約9割が家庭ごみや産業廃棄物を焼却する時に出ると推定されるため、平成9年12月以降、「大気汚染防止法」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、「ダイオキシン類対策特別措置法」などによって、焼却施設などから排出されるダイオキシン類やばい煙の規制、焼却施設の改善等の対策が進められています。
  2. ダイオキシン類の種類
     ダイオキシンは、ダイオキシン類2つと同様の毒性を示すダイオキシン類似化合物1つに大きく構造が分けられます。ダイオキシン類対策特別措置法では、この3つをあわせて「ダイオキシン類」と定義していますが、これらを細かく分類すると毒性をもつものだけで29種類があります。
     この種類によって毒性の強さが異なっています。そこで、最も毒性の強いものに換算した量や濃度を足し合わせた値(通常、毒性等量(TEQ)という単位で表現)が用いられます。
 
 

 ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB[ダイオキシン類似化合物])の総称です。
構造は、基本的には炭素が6角形に結合したベンゼン環2つが酸素等で結合し、それに塩素が付いた構造をしており、塩素の数や付く位置によって種類が分けられています。

○ ダイオキシン類の構造図*数字の位置に塩素が結合します

PCCD(ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)
PCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)
コプラナーPCB(コプラナーポリ塩化ビフェニル)
 
     
  Q2 無垢の木材を焼却してもダイオキシンが発生するのですか?  
   燃焼時にダイオキシン類がどのようにして出来るのか、生成のメカニズムが全て解明されているわけではありませんが、ダイオキシン類は、
 @ 不完全燃焼により生成するもの
 A 排ガスが300℃前後で集じん器に流入した場合に生成するもの
の2つがあると考えられています。
 ダイオキシン類は、構造中に必ず塩素を含んでいますが、塩素は燃焼物そのものだけでなく、大気中、雨水、土壌等あらゆるところに極微量含まれているため、何を燃やしてもダイオキシン類が発生する可能性があります。
 また、ダイオキシン類の発生量は、焼却設備・焼却条件・焼却物によって変化しますが、焼却物よりも焼却設備や焼却条件の影響が大きいため、焼却物に含まれる塩素の量でダイオキシン類の発生量が決まるわけではありません。
 
 
 
     
  Q3 焼却物の塩素の量がダイオキシンの発生量に関係しないのですか?  
   焼却物に含まれる塩素の量が増えるほどダイオキシン類の発生量は増加するように思えますが、実際には、焼却物に含まれる塩素の量とダイオキシンの発生量の相関は低いという結果が出ています。
これは、塩素の量よりも燃焼温度や空気の量など様々な焼却時の状況の方がダイオキシンの発生量について及ぼす影響が大きいためです。
 ものの焼却におけるダイオキシン類の生成に、何に由来する塩素がどのくらいの割合で使われるのかはっきりしていません。しかし、例えば空気中に10ng-TEQ/m3のダイオキシン類があるとすれば、そのダイオキシン類に含まれる塩素は、4〜5ng/m3程度(最も毒性の強い種類とした場合)ですが、一方で一般的に大気中には塩化水素などの形で、その数百倍もの塩素が含まれていることがあります。
 自然界には大気のほかにも、雨水、土壌等あらゆるところに塩素が極微量含まれており、これらは発生するダイオキシン類に含まれる塩素の量に比べて非常に多い量と考えられます。
 これらのことから、焼却物のいかんによらず、焼却方法によってはダイオキシン類が多く発生することが十分考えられます。
 
     
  ○ ダイオキシンの塩素と大気中の塩化水素の塩素の量(例)
区分 濃度 摘要
ダイオキシン (2-3-7-8 TCDDの場合) 10ng/m3 C12H4O2Cl4 分子量 321.9
  上記のダイオキシンに含まれる塩素 (A) (A) 4.4ng/m3 Cl 原子量 35.45
大気中の塩化水素(H13.7.26 〜27に長野県松本市で測定) 580ng/m3 HCl 分子量 36.46
  上記の塩化水素に含まれる塩素(B) (B) 564ng/m3 Cl (B)/(A)=128
 
  【参考】  
 
  1pg(1ピコグラム)=10-12g(1兆分の1グラム)
  1ng(1ナノグラム)=10-9g(10億分の1グラム)
      (例)10ng/m3は、東京ドームの中の空気(124万m3)に、約0.0124g
         (耳掻き1杯程度)が含まれているという濃度です。
 
     
  Q4 焼却施設のダイオキシン規制内容はどうなっていますか?  
   廃棄物の木くず等を燃やす場合について、ダイオキシン類対策特別措置法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などにより、焼却施設に対する構造基準、排出基準等が次のとおり定められています。
 なお、有価物である木くずを燃料として燃焼する場合は、適用されません。
 
   
     
  Q5 ダイオキシン類の濃度測定費用は低減できないのでしょうか?  
   焼却能力50kg/h又は火床面積0.5u以上の廃棄物焼却炉については、以下の法規制により、ダイオキシン類の濃度等の測定等が義務付けられています。

1、ダイオキシン類対策特別措置法関係   
年1回以上、排出ガスとばいじん及び焼却灰その他燃え殻の測定・報告


  測定は、ダイオキシン類のうち毒性をもつ29種類について、1兆分の1g(1pg)以下の単位での分析が必要です。このように高度な分析が必要なため、一般的に1施設の1回の測定(排ガス及び焼却灰・ばいじんを測定した場合)に、標準的には平均70〜80万円程度の費用がかかります。
  なお、関係者が協力して、測定する件数をまとめて一括発注することにより、同測定費用を1箇所当り40万円程度に抑えた例もあり、測定費用を抑える方法として有効と考えられます。
なお、環境省においては、ダイオキシン類の簡易な測定方法等について、技術開発を推進しているとのことです

 


2、労働安全衛生規則関係
6月に1回以上、灰出し等作業時における作業環境の空気の測定・記録

  労働安全衛生規則に係る灰出し等作業時における作業環境の空気の測定については、空気中のばいじん等を誰でも測定できるデジタル粉じん計を使って測定し、これに過去の測定データ等から得られた一定の値(D値)をかけてダイオキシン類の濃度を計算する簡易測定の方法をとることができます。
測定に必要なデジタル粉じん計は、労働福祉事業団の各都道府県産業保健推進センター又は林業・木材製造業労働災害防止協会において、無料貸出によりその操作方法の指導を受けることができますのでご相談ください。
 
     
  Q6 今後、木くずの処理をどのようにしたらいいのでしょうか?  
   焼却処分等される木くずをできる限り減らすことが重要であり、チップ化をはじめ家畜敷料、堆肥等への有効利用に向けて取組むことが重要です。特に、今後は木材乾燥などへの熱供給や発電等の木質エネルギー利用も可能性があります。
 このような残廃材の有効利用施設とともに廃棄物の木くず等をやむを得ず焼却する場合のダイオキシン対応の焼却施設等の整備に対しては、補助、融資等の支援措置がありますので、これらを活用して木質資源の有効利用と適正処理を推進してください。
 
 
参考

木材産業の残廃材の利用状況は、平成10年においては、93%が木材チップ、家畜敷料、燃料、堆肥などに利用され、残りの7%が主に焼却処分されています。

○ 木材産業から発生する残廃材の利用状況(平成10年) (単位:千m3)
発生量 利 用 状 況 焼却処分等
木材チップ 家畜敷料 堆 肥 燃 料 その他 小 計
14,920(100%) 5,392(36%) 3,856(26%) 1,017(7%) 3,306(22%) 373(3%) 13,944(93%) 976(7%)
資料:(財)日本木材総合情報センター「木質系残廃材を原料とするチップ製造業」

 
     
  ダイオキシン対策に係る平成14年度予算概算決定の概要  
     
  焼却炉及び木くず等有効利用施設導入に対する助成措置#CFDAE4  
 
  1. 木材産業構造改革事業                  2,648百万円
     木材関連業者等の組織する団体等が導入する焼却炉・有効利用施設等について、木材加工流通施設等の付帯施設として積極的に対応。特に、リース方式による加工・流通施設の整備において、ダイオキシン対策型の焼却炉の導入を対象に追加。
    • 補助率:1/2等
  2. 木材供給高度化設備リース促進事業             81百万円
     各企業等(個人)がリースにより焼却炉・有効利用施設等を整備するためのリース助成を積極的に対応。
    • 助成率:リース料のうち物件価格分を除く金利、手数料等相当分(リース付加料)の1/2(リース総額の9%程度
 
  焼却炉及び木くず等有効利用施設導入に対する金融支援措置  
 
  1. 木材産業体質強化対策事業 89百万円
     焼却炉等の整備に必要な資金の借入に対する利子助成を積極的に対応。
    • 利子助成率:3.5%以内
  2. 林業改善資金
    焼却炉等について、特認間伐施設資金の対象として積極的に対応。
    • 貸付条件:無利子、償還期間10年以内
  3. その他
       中小企業施策等における貸付制度等の積極的な活用の推進。
 
     
  その他の残廃材の有効利用に対する助成  
 
  1. 地域木材産業活性化推進事業              56百万円の内数
    木材関連業者等の組織する団体等による林地残材、製材工場残材等の未利用木質資源の発生量の把握、有効活用システムの策定・普及、関係者間の連携による需要の開拓等に助成。
    • 補助率:1/2
  2. 木質バイオマスエネルギー利用促進事業           353百万円
    木材関連業者等の組織する団体等による木質バイオマスによるエネルギー供給施設(バイオマス発電施設、ペレット製造施設等)の整備のための事業を新設。
    • 補助率:1/2

 

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