このページを  保存  お気に入りへ  印刷

木質バイオマスの動向について 


   

123456789

木質バイオマスの動向について(要旨)

(社)全国木材組合連合会

  • 循環型社会経済システムでは、天然資源の使用を抑制することが大きなテーマとなっているが、木材は化石・鉱物資源と違い、森林→伐採→植林→成長→森林と一定の期間を経て再生産が可能な循環型資源である。

  • 森林の持つCO2を吸収し、固定する機能が地球温暖化を防止する効果があると注目されている。

  • 木材は、加工エネルギーが少なく、建築材に使われた場合、建築物として使用されている期間中は材内に炭素を固定しており、他の材料と性質が大きく異なる有機性資源である。

  • 再生可能資源のリサイクル化、地域循環型システムの形成に当たっては、森林の成長に見合った利用(再生可能で資源が循環利用される範囲)を先ず、優先した中で、リサイクル化、循環利用を推進すべきである。

  • 木材は軽くて丈夫であり、加工しやすいこと、湿度を調整し、断熱性が高く、独特のぬくもりを感じさせるなど石材や金属等と大きく異なる性質もつことから、古代から住居、道具、日用品、船、神社仏閣、橋等の建築物、エネルギーなどの様々な用途に使用されていた。

  • 木材の加工時に副産物として排出される樹皮、おが粉、端材などについても製紙原料、燃料チップ等エネルギー源、バーク堆肥、畜産敷料、キノコ培地、炭化原料、ボード原料等として、リサイクル利用されている。

  • 木材を炭化すると木炭になり、古くから燃料や製鉄の原料に使われている。近年、木炭はエネルギー利用よりも住宅の床下調質、土壌改良、水質浄化、排ガス吸着、脱臭、シックハウス原因物質吸着など様々な物質を吸着する吸着剤としての機能性木炭としての利用が進んでいる。形状についても通常の木炭の他、チップ状のものや微粒粉末にした木炭と液状高分子系樹脂を混合した木炭塗料、シート状にしたものもある。

  • 木材のエネルギー利用については、歴史的に見ると、古くは薪、木炭として、昭和32年頃までは年間200万tの生産・消費量であり、当時の日本国有鉄道の車扱い貨物としても上位にランクされる輸送量があった。

  • しかし、その後の燃料革命により、石油・天然ガスに急速に転換され、減少を続けたことから、国産エネルギーに占める薪・木炭の供給割合は、昭和30年の10.4%から昭和53年には0.5%と縮小した。

  • 木質燃料ペレットは、石油代替エネルギーの一つとして注目され、昭和50年代後半から60年当初まで全国25ヵ所以上で、製造プラントが建設されたが、その後の石油価格の低下から、需要が急減し、事業採算性が厳しくなり、見通しもなくなったことから、ほとんどの施設が事業の終止符を打つのに非常に苦しみながら事業撤退を行った経緯がある。

  • 平成14年12月27日には、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定された。

  • バイオマスのエネルギー利用については、法的な位置付けがなされていなかったが、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」の政令改正(平成14年1月25日公布・施行)により、新たに追加(バイオマス発電、バイオマス熱利用、バイオマス燃料製造)され、新エネルギーの中に位置付けられ、エネルギー利用を中心に、国家的な戦略の一つとして、助成措置を含め総合的な推進対策がとられることが期待される。

  • また、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」が平成14年6月に公布され、新エネルギー等のさらなる普及のため、電気事業者に対して、一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより、新エネルギー等の利用を推進していくこととしている。

  • 大型の木質バイオマスエネルギー利用施設では、その規模が大きくなればなるほど安定的にバイオマスを確保できるシナリオでないと施設の持続的運営に支障を来たす。

  • NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、「バイオマスエネルギー導入ガイドブック(313頁)」を作成しているので、事業化に当たっては参考にされたい。

  • 木材産業におけるバイマス資源の有効利用の方向としては、例えば、木材乾燥の熱源利用や自家発電、炭化処理・堆肥・バイオトイレ・建設・土木園芸・ガーデニング・緑化資材等への利用(個別、共同)が検討される。その際、共同化や地域内外の先行事業体(販売の共同化を含む)や試験研究機関・異業種・自治体・NPO・地域住民等との有機的な連携を図って展開することが重要である。

  • バイオマス関連事業の展開においても出口対策(エネルギーや製品の安定的な需要の確保)が基本である。木質バイオマスエネルギー化、リサイクル化の事例を調査している中で、施設によっては、コンサル、機械メーカー等、あなた任せの構図で進んでしまい、得てして、大型の施設となり、製品の販売先となる出口が少ないまま稼動して、「売れない」仕組みが構築されてしまい施設の稼動に支障を来たしている例も見受けられる。特に、補助事業の場合、必要以上に大型の施設としてしまい、結果として、設備償却費の増大、運転コストの増大を招き、運営が厳しくなっている例もある。

  • 木質バイオマスのエネルギー利用についてもアントレプレナシップが重要であり、優れた事業計画でも、起業家の力量によってはキャッシュフローを生む前に賞味期限を迎えてしまう。明確な指針と状況変化にあわせて進化する事業体にすることが重要。

  • 事業化に当たっては、マーケットの魅力度(マーケット特性・規模・シェア)や優位性、戦略的差別性(技術革新、CS(顧客満足度)、流通チャンネル戦略、コストパフォーマンス)と合せて、財務的要件として、キャッシュフローを生み出すことがポイント。

  • メーカーの中には、新技術を活用した小型プラントでガス化方式によるコージェネレーション(木材乾燥用エネルギー利用+自家発電270kW)がプラント一式で6千万円程度を目標に実用化に向けて展開しているところも出てきている。木質バイオマスは、ローカル性があることを考えると、大規模プラントでなく、地域の状況に応じて小型で低コストのものを複数連結するようなシステムの方が、システムトラブルや点検時のリスク分散の面で優位性があるものと考えられる。

 

123456789

全木連webトップへ