〔文責:企画部指導課・細貝〕

 

「挑戦する中小企業〜危機はチャンス〜」

 −−国民金融公庫シンポジュウム−−

 

 

日   時   平成9年 2月 7日(金) 13:00〜16:00

場   所   経団連会館「経団連ホール」

 

 

コーディネータ  大 田 弘 子 埼玉大学大学院政策科学研究科助教授

パ ネ ラ ー   藤 村 哲 哉 (株)ギャガ・コミュニケーションズ代表取締役社長

   〃       藤 崎 清 孝 (株)オークネット代表取締役社長

   〃       田 島 庸 助 (株)タジマツール代表取締役社長   

 

 

(大田)

 PHSやパソコンといった情報通信機器の急速な普及にみられるように、世の中は極めて速いテンポで変化している。変化とは序列が崩れることであり、変化に対応する企業と対応できない企業との格差がますます拡大する時代が到来している。

 パネリストの経営者は様々な変化に対応してこれまでだれもやらなかったこと、やれなかったことに挑戦してきたが、これまでの事業展開の概要と危機をチャンスに替えたきっかけについて聞きたい。

 また、様々な変化をチャンスととらえ、従来の常識にとらわれない発想でものにしているが、実際に取り組みはじめると様々な困難が生じると思うが、どのように克服したか。

 

(藤村)

 当社は、1986年に創業し、当時はビデオブームで海外の映画のビデオ化権の買い付けを始めた。現在は、7割が外国映画の版権の買い付け・配給をしている。ビデオにはビデオ化権、テレビは放映権がある。また、ビデオの業界紙も作成している。

 当時、ビデオデッキが家庭に普及しはじめた時期であり、日本で公開済みの映画のビデオ化権は、レンタルビデオ店が雨後の竹の子のように登場すると、ビデオソフトメーカーに飛ぶように売れ、年商1.5億円から2年で11億、3年目で50億の成長を遂げることができた。つまり、市場そのものが成長したともいえる。成長のスピードが急なため、組織も追っかけながら作るような形になり、様々な業界から人を集めた。人も早め早めに採用し仕事を覚えてもらいながら展開をしてきた。

 市場の急拡大とともに買い付けできる公開済みの映画は瞬く間に底を突くようになった。新作映画のビデオ化権も映画配給権などとセットで売り出されるようになったため、過去の公開実績を参考にした買い付けができなくなり、老舗の大手映画会社がいる映画配給業界に参入し、映画がヒットするかどうかを事前に判断せざるを得なくなった。

 その後、突然市場がマイナスになったため、差別化のために当社の優位性を発揮できるものを考えた。それまでは、どんぶり勘定的なもので、感性とかがメインだったが、データによるマーケティングを開発し、それが現在成長している。

 危機をチャンスにしたきっかけは、生き残りのためヒットする映画を見い出す仕組みを自ら創出するしかなく、そのため過去に公開された2千タイトル以上の海外映画をデーターベース化し、作品のジャンル、主演俳優、配給収入などを検索できるようにした。次にモニター制度を導入して、見る立場から様々な情報を収集した。

 これらのデータをもとに配給予定の映画興行をシュミレーションし、ヒットするかどうか判断した。データによるマーケッティングは通用しないといわれたが、だれもやっていないことをやればセールスポイントになると前向きに対応し、他社よりもヒットする確立が高くなった。「マスク」「セブン」は代表例である。

 新作映画を評価する場合、過去のデータだけでなく「ギャガモニター1000」というモニター制度を活用しているが、業界で初めての取り組みであり、現在の姿になるまで紆余曲折があった。

 当社の場合、お金を払ってモニターをしてもらうようにしている。最初にモニターを募集の広告を出したところ千人に対して2万人もの応募があった。ところが、映画が好きなマニアばかり集まる傾向があり、映画に関心が高い特定の人たちでは一般に公開する場合の参考にならず、客観性がないので募集方法を改め、劇場に来た一般の方に募集のチラシを配って集め、予め指定した映画を指定した場所と時間に見に来てもらうようにした。

 老若男女にわたる幅広い層のモニターを組織しているが、映画の内容に合わせて、モニターを1作品で

300人程度(客層、年齢等を勘案)のサンプル集団に映画を見てもらってリサーチしている。例えば、アクションであれば若い男女を中心に、ラブストリーは女性を中心に構成し、モニターを実際の視聴者を代表するサンプルに近づけてより正確な意見や感想を得ている。

  (大田→この結果を分析して視聴者が満足しそうな映画を買い付け劇場に配給することになるのか。)

 最初からそううまくいかなかった。試写会後、多くのモニターが思ったより面白かったと満足していたものを自信をもって公開したところ予想した興行収入が得られなかった。どういうことかというと、映画がヒットするかどうかは見た後の満足度よりも、「見てみたい」と思ういわば期待度が大きくかかわっていることがわかった。

 そのため、映画館に満足度調査ということで、映画を見てもらい、それを8角の評価で表している。映画の内容がよくても期待度の調査数字が高くないと客が入らないことが多く、期待度が高いと内容が悪くても客は入る。ジャングルブックはその例である。

 期待度はタイトルのつけ方やPRの仕方で大きく変わる。期待度を重視するようになってヒット作品が増え、一般的には毒があった方がよい。因みに、セブンは期待度の高い映画であり、昨年公開された映画の中で2番目の興行成績を上げる大ヒットになった。

 

(藤崎)

 当社は衛星を使い、テレビの画面を見ながら中古車を売買する会員制のオークションを展開している。

 従来は中古車販売業者はオークション会場に買い付けに行くと1日人が張り付いていても求める車が見つかるとは限らず、ないと次の日も出向くことになっていた。また、売る側も売れるかどうかわからない車をオークション場にトレーラーで運ばなくてはならず、売れないと持ち帰ることになり、その物流コストが問題になっていた。

 このように、業者が一個所に集まって売買を行うオークションは時間やコストの無駄があるので効率的な方法を検討し、85年に写真などをもとにオークションができるようなシステムを考えた。

 通信衛星を使ったシステムは鮮明な画像を多量に送信でき、全国の業者をネットワークでつなぎ、販売店や事務所に居ながらにして、リアルタイムで売買が可能なものである。システムはホストコンピュータから出品車両の映像と当社の委託検査員が査定した評価を全国に配信し、会員業者はテレビ画面を見ながら競りに参加する。

 入会金や会費は不要であるが、会員から出品料、入札参加費、落札手数料、衛星通信を受信する専用端末のレンタルを徴収して運営している。

 売る方は中古車をオークション会場まで運ぶ必要がなく、買う方も会場に行く必要がないのでこれまでのオークションに比べコストや時間が大幅に節約できる。このような利便性が受けて、現在、全国4,500社の会員によって、年間約25万台が売買されている。オートバイや花の業界もオークションをスターとさせている。

・苦労した点

  立ち上げの時に苦労したのは、通信衛星を使う技術的な問題や資金面の問題など多くの困難があったが、一番の苦労は当初、自信をもって募集した会員が予想の半分も集まらなかったことである。コストと時間が大幅な節約になるシステムがなぜ受け入れられなかったのか不思議に感じた。調べたところ現物を見なければ中古車の売買はできないという業界の常識の壁が思ったよりも厚いことだった。外装や内装の状態など様々な要素を考えた上で最終的な相場が決まる。プロ同士の取り引きとはいえ、テレビの画像だけでそこまで判断できるのかという不安が存在したようである。

  (大田→そこで映像と情報を組み合わせた委託検査員による評価システムを考えたのか。)

 出品車両の状態を確認できない会員に代わって、独自の検査制度を確立し、委託検査員が車をチェックし、0から9までの点数で査定し、事故車などは最初から出品させず、その評価の中で5とか6点以上のものは安心して買えるという信頼をディーラーから得た。委託検査員は全国で130人が配置されている。

 

 

(田島)

 当社は巻尺やカッターをはじめとする様々な建築工具を製造し、明治42年(1909年)に祖父が創立させた。32年に日本で初めてスチール製の巻尺を手がけ、戦後に量産体制を確立してからは、専門メーカーとして順調に売り上げを伸ばしてきた。工作機械の巻尺に入ったとたんにオイルショックが訪れ、売上げが4割減少し、退職金に1年分をプラスするという条件で、希望退職を募り、人員を整理した。事業縮小の辛さを思い知らされたため、不況に左右されにくい経営の重要性を痛感した。

 巻尺はそうそう減るものではないのでセールスしても売れず、76年に社長に就任した際、巻尺に改善の余地がないか見直しを行った。巻尺も現場に行ってはじめて開発余地があることが分かったが、それまでは現場に行くこともなかった。

 建築現場の職人にどんな機能が必要なのかを聞いて回り「目盛りを見やすく」「水平方向に1.5m以上真っ直ぐに保てるように」など数々の要望があった。

 巻尺は丈夫で長持ちするものであれば売れるとばかり思い込んでいたが、生産側の思い込みで作る姿勢を改め、利用者(職人)の立場で製品開発を始め、その結果、「ハイ19」という商品はスケールの幅を広くして目盛りを見やすくするとともに、水平方向に1.7m伸ばしても真っ直ぐ保つことができるので、端を押さえる人がいなくても測ることが可能であり、使う人に便利な商品が開発された。

 職人の話を聞いて行くうちにカッターや墨坪などの工具にも巻尺と同様に改善の余地があることが分かり、商品を開発した。例えば、墨坪は木材に線を引くものであり、使う職人のこだわりがあるが、平安時代から基本的なデザインは変わらず、墨がこぼれて困るという声があったので、プラスチックのタンクに墨を密封し、こぼれないようにした上、カラフルな色を使いデザインを一新したところ若い職人に好評を得た。 

 従来の常識にとらわれない巻尺の専門メーカーから建築工具の総合メーカーに転身し、20年かかって

100億の売上(5倍の成長)となった。

 特に、これといって専門分野に強いものがなかったので、変えることを中心に仕事をした。

・社員の意識を変える

 巻尺では業界2位という自負があり、「丈夫で長持ちすれば売れる」という固定観念から抜け出せず、建築現場で職人がどのように使っているかは考えさえしなかった

 そこで6人の技術者に建築現場を回らせ、直接、職人から当社の巻尺のどこにどのような問題があるのかを聞き出すことから始めた。最初は邪魔だとどなられたり、無視されて話を聞き出すことさえできなかった。酒を飲みながら聞くと、褒め言葉ばかりでてきて参考にならなかったが、続けていくと、技術者も聞き上手になり、職人から本音や様々な要望を聞き出せるようになった。これが新しい巻尺の開発につながった。

  (大田→巻尺以外の工具もはじめて取り組んだようだがうまくいったか。)

 巻尺の専門家の意識が強く、真剣さがかけていた面があり、カッターや墨つぼなどの工具の開発も失敗の連続であった。初期に開発したカッターは「長く持っていると手が痛い」「砂が詰まるとすぐ壊れる」と酷評され、マーケットに出してもすぐに回収という状況であった。

 しかし、意識改革は失敗から学ぶことが第一との考えからとにかくマーケットに出荷した。失敗しても不都合な部分を調べさせ改善させた。試行錯誤を繰り返すうち、技術者が職人の立場に立って、もっと丈夫で長持ちするとか各種の製品を開発するようになり、このカッターはヒット商品となった。

 口で言うだけでは社員の意識は変わらないので、失敗し体で覚える機会が必要ではないか。

 

(大田)

 3社ともニッチを見つけ、新しい価値を付けて販売したものといえるが、そのアイデア製造はどこから考え、そのこつはどのようなものか。

 また、ニーズの把握はどのように行っているか。

 

(藤村)

 社長は責任も大きいので普段からフルに色々なことを考えていることが、基本的に必要である。刻刻と替わる情報、他社の情報等々を含めて集めることである。また、本を読むことが多くなり、アイデアの参考になる。

 さらに、アイデアを出させるのではなく、出したくなるような組織をづくりを行っている。当社には工場も店舗もないので、人という経営資源が最大の財産であり、社員のやる気と能力を引出すことが最も重要な課題である。

 企業の活力は、「社員の質」「人数」「頭脳的稼働率」の累積によって現われると考える。頭脳的稼働率は客観的に測ることができないが、優れたアイデアがでれば稼働率が高いと判断される。そのアイデアにより予想以上の利益が出れば、提案した社員に利益の一部を配当したり、アイデアの採用数に応じたボーナスの支給を行っている。

 また、全社員130人と取引銀行、株主を集め年1回、会合を持つが、そこでも会社のビジョンを含め各種の提案をしてもらっている。

  ニーズの把握については、マーケット情報等が集まる仕組みを作ることが重要であり、ビデオ業界の業界紙を作ったのはそのためである。業界紙を作ったことにより、宣伝やポスターの作成というアウトソーイングの周辺の仕事も頼まれるようになった。その面からは、業界紙をつくった意義は大きく、周辺の状況等を含め関連する情報が集まるようになった。

 メーカーの立場だと自分のことが中心で業界の全体の情報が入らないので商社的なのポジションをとった。

 ポスターも色々な原案を作っているが、以前は社長が選んで決めていたものを、実際にそのビデオや映画を見る客層のモニターに選んでもらいう仕組みに切替えた。

 放題も同様にリサーチの仕組みを監督毎のヒット率、役者毎のヒット率等をソフトで対応できるようにした。

5年で50億の売上げとなった、その後、当社の優位性が図れる仕組みを作っている時は売上が伸びなかったが、ここ3で倍の売上となった。

 

(藤崎)

 粗削りな発想をビジネスとして耐えられるようなアイデアが大切である。テレビオークションはすばらしい発想であったと思うが、映像だけでは会員を集められなかった。委託検査員システムというアイデアがフォローして事業になった。

 アイデアの特定の情報源はなく、各種のところから集める。問題意識がなければ論外であり、改善することとか、自分から情報を見つけることを常に考えるて情報収集にあたっている。

 また、社員の中でアイデアを出した人は報奨金の制度を設けている。金額はその内容によって、5千円〜20万位まであるが、奇抜な発想ばかりを求めてはいない。現在のシステムの不合理な点や非効率的な面を補うアイデアを求めている。

 検査の質を高めるための委託検査員を評価するシステム、売買後の事務処理の簡素化、合理化を図る工夫等はこの制度により生まれた。奇抜な発想ばかりではビジネスにはならないので、欠点を補うアイデアの積み重ねが、他社の追随を許さない優位性になると考える。

 ニーズの把握は、今何が一番問題があるか、理想を追うものは一体何かを考え、それを追求することである。業界の改善、商売そのものが一番何処で儲かるかということを考えてあげること、儲ける所は何かを提供してあげること、事故車をはずし、見聞きして商売をやりやすくしてあげることではないか。

 全てのことはニーズから始まる(理想論)。終わってしまうものを現実性を持たせ、時間、コストを合せて

現実に近づけることではないか。

 アンケートで最後に意見を自由に書かせることが本当のニーズが分かることが多いが、それはデータ化し難い。

 

(田島)

 アイデアが出るのは興奮したときにまとめて出てくることが多い。現場について、小さな改善点を手がけ、失敗する。つまり、窮地に落ち込むと興奮するのでアイデアが出ることがある。アイデアがでる人と出ない人がいるが、出る人は逃さないことが大切である。

 ニーズの把握については、建築現場の職人の生の声を聞くという展開は「タジマアドバイザークラブ」というモニター制度に発展し、800人が参加している。

 このモニター制度は、商品が使われている現場に詳しい技術者を育成することを目的としており、単に商品開発のためのアイデアを出してもらうものではない。モニターのアイデアから開発した商品が売れなかったことがあったので調べた結果、意見を盛り込みすぎ、逆に使いづらくなったことが原因だった。多くの意見を聞いても現場を知らなければどれが重要かわからないからである。アイデアは現場に詳しい技術者から生み出されると考える。

 開発する人が自ら現場から情報を入れ、醸成して使うこと、発想は個人の中から出てくるものである。ニーズはユーザとしての視点を常に持って開発することが重要である。

 

(大田)作ったものをどのように販売していくか、人材の獲得と育成について聞きたい。

 また、注目しているマーケットやアドバイスがあれば合わせて聞きたい。

 

(田島)

 造ったものを如何に販路に結びつけるかは、小売店に自分で行って(問屋と一緒に廻って)その店頭で反応を調べることが何よりである。

 人材の獲得については、リクルートテストを使ったが高度で使えなかった。簡単な計算とヒアリングを行っているが、元気がよくて計算ができ、まともな会話ができるという基準で採用した。

 学歴は関係無い。日本語がちゃんとしゃべれる人が基本であり、コンセプトをしっかりすることである。

 注目しているマーケットは、リフォームは有望といわれているが難しい。当社は、圧延鋼材を使うが、工場、営業、購買のそれぞれに、部門間のコミニケーシヨンギャップがある。

 アドバイスは、自分を暇にすることである。新しいことは失敗することが多い。29歳で社長になり先代が失敗を許してくれた。失敗しないようなものはうま味がない。

 情報過多にならず、ローテクでも基本をしっかりもって、方針を変えすぎないことである。

 

(藤崎)

 12年前はキーボードアレルギーがあった。最初からある程度の人を集め広告のインパクトで革命的な仕組みで顧客を獲得した。当初から千名の会員から参加希望があった。後は紹介や口コミで集めた。

 個人の消費者にものを売る仕組みは、消費者は映画と似ている。ブームが商品に火がつく、インパクトがなければ売上に結びつかない。企業がかなり使うとそれが消費者に浸透することもある。

 人材については永遠の課題で、良い人材が入るとそこにビジネスが生まれる。成長が早いと中途採用でどれだけ優秀な人材が集められるかがポイントである。今までは大手に集中していたが、期待どおりのことがやれなかったりした。人材の専門会社等ありとあらゆる方法で採用した。

 注目しているマーケットは、人材に関わる部分であり、中途採用の紹介業、 ダウンサイジング、アウトソーイングが多くなっている中で、コンサルタント会社が経営のプロを探してきて当てはまるとか。企業が外に全て求めることも出てくるのではないか。

 アドバイスは、常に新しいことをやることで、失敗を許し、失敗したことのフォローアップが重要である。

規制緩和は身近になくても進んでいる。ビジネスチャンスは転がっている。それを見つけ形にすることではないか。

 

(藤村)

 最初は人が集まらず、また、人はどんどん辞めていった。アルバイトニュースで採用したりしている。

人の出会いが重要である。昔から知っている人とか。

 注目しているマーケットは、デジタル衛星放送である。これに一つのチャンネルを持つのは一つの月刊誌を持つ位のコストでできる。全国に情報を送るインフラをもつこと(チャンネルをもつ)が重要である。

 また、個人の情報が管理しきれないでいるケースもあるので、マネージメントをしてくれる個人のパーソナルマネジメントが求められる。

 アドバイスは、商品・市場の差別化、経営のスピードの差別化。小回り、柔軟性等であり、現在は工業化社会の10倍のスピードで進んでいる。それをうめるようなものがあればと考える。

 

(大田)

 日本の経済の先行が悲観的な話が多く、大競争時代の到来、情報技術の革新といった構造変化によって危機的な状況に追い込まれる企業が少なくない。変化は企業に危機をもたらすが、同時にチャンスをもたらす。危機としてとしてとらえず、ビジネスの世界では変化を受け入れ、もっとよい商品やもっとよい方法を考えるチャンスとして前向きにとらえる(変化を起す)ことが重要である。

 チャンスを生かすには、顧客が何を望み、何を望まないのかを的確につかむこと。要はどれだけ徹底してユーザーサイドにたてるかである。

 さらに事業化するためには、アイデア+新しい技術やサービスの裏付けが必要である。そうすれば新しい商品や業態を創出して成長していくことが可能ではないか。

 

 

 

〔コメント〕

パネラーとして登場した3社は木材産業とは業態が異なるが、企業経営の面で参考になることが余りにも多いので、取りまとめてみた。

ポイントは、

@巻尺から建築工具に展開した(株)タジマツールの企業の永い歴史(暖簾の邪魔)と業界2位の甘えの克服、ニーズ(現場職人の使いかって)の把握→商品開発→失敗→商品の改良までの過程を見ると、ニーズを聞くに至るまでの苦労と作り手の思い込みによる商品開発の間違い。

A急成長から安定成長に見事に軟着陸させた(株)ギャガ・コミュニケーションズ(一般的に急成長した会社は人と金の流れが成長のスピード追いつかなかったり、利益を本業に再投資せず、別な事業に投資して失敗し、倒産することが多い。) は、映像ソフトと業態は大きく違うが、見た後の満足度より、期待度が高いものがヒットする(住宅でいえば、購入後の住み心地よりも、この住宅に住みたいという期待度=住みたい度 が良い悪いは別にして、結局は売れてしまう)。

B現物熟覧(木材でも基本的には同じ)という中古車業界の常識を中古車の画像とその検査評価システムにより新しい取り引きマーケットを開拓した(株)オークネット。

等であり、新しい仕組みを作ることに果敢にチャレンジし、数次にわたる失敗をバネにして、創造性を発揮させ新しいマーケットを開拓したことは企業家精神そのものである。景気が悪い、儲からない、人材がいない、資金がないのを理由にするのでなく、危機が訪れる前に回避して置く努力を忘れてはいなかったか。以前は、製造業の最大の財テクは「設備投資」であったが、それにどれくらいの企業が夢を持ち自ら青写真を引いて取り組んだか。流通業についても新しい合理的なものの流れつくったり、施設整備、新しいサービスの提供をどれだけ真剣に取り組んだか。今一度、木材産業としても企業としての「初志貫徹」を考えてみるべきである。

ともあれ、過去の反省だけで終わるのではなく、変化の激しい時代に当たってゼロベースから全てを見直し、新しい時代にあったものに変換し、ニーズ→生産→供給(サービス提供を含む)→消費(リサイクルを含めて)を連関させて、トータルのシステムとして提供させていくことが求められる。

自助努力を基本として、企業家としての手腕に期待したい。

 

(注)取りまとめに当たり、当日のシンポジュウムの内容については、共通する項目をまとめるなどメモし  たテキストデータを大きく編集して作成したので発言内容が異なっているところがある。また、一部、聞  き取りが不十分なところがあることをご了承頂きたい。