文責:企画部指導課・細貝一則

 

知的創造の時代を迎えて

 

日  時     平成8年2月22日(木)13:40〜15:10

場  所     虎ノ門パストラル「鳳凰の間」

講  師     アイリスオーヤマ   代表取締役社長 大 山 健太郎   氏

概  要

中小企業の特徴として商品開発はうまいが販売は弱いということがある。当社は全国

7,000のDIYや大型店舗と取引があり、小売店の販売動向がリアルタイムで分かる。生活者中心の市場で販売を行っている。

  昭和20年生まれなので戦後50年と同じである。91〜92年にふくれあがったものが戻り、その中で価格破壊が発生し、94年からは価格が下がっている。

 価格競争は従来は製造業が仕掛けていたが、今回は、小売業が仕掛けた。米国に通用する価格という名目に加え、バブルの中で設備増強があり過剰生産・販売となり、価格破壊というより、価格崩壊と言える。小売業の販売動向はよくなっていない。

 その背景をみると、450兆の国民生産に対し、世界は24兆$であり、わが国は20%弱の生産高を占めている。この中で、中国は経済成長を続け、人件費も5年間で2倍になった。年率15%の成長を続けると5年で経済は2倍になる。わが国の昭和30〜40年代と同じである。言ってみれば、日本の20%のシェアと同じような地域をもう一つ作らないと需要は回復しない。

 戦後はないものを作れば売れ、資金も借り、技術や技術革新、マーケッティングは欧米から導入し、日本型と言えるのはマネージメントだけである。米国の賃金はわが国の1/2、中国に至っては1/30である。

 企業の立場ではなく、生活者の立場で考えることが重要で、メーカーの拘っている差別化はどうでもよいことかもしれない。テレビは6割、ビデオは7割が海外で生産されている。

 商品開発は生活者中心の座標軸に変える必要がある。日々変化するニーズに合わせることは大手ではできない。日本の生活者はニーズがころころ替わる。ビジネスチャンスは大きく、製造の技術開発、品質開発、コスト開発をマーケットニーズ型に換えるかがポイントであるが、流通に関しては無関心なことが多く、卸屋や小売屋の領域であるとしている。メーカーで3とか5%のコストダウンは難しいし、それは小売価格に反映されていない。一般的に、1,000円の商品は300円とか400円のメーカーの出荷価格であるが、その中では無理とも言える。

 シーズは重要であるが、生活者中心という中では役にたたない。当社では実用新案を数百保有しているが、実用新案だけではビジネスにならない。発明→発見の時代になってきている。

 当社は、本社は宮城県にあり、北海道、兵庫(三田)、佐賀(鳥栖)、静岡(大山町)、に工場がある。半径300キロで日本全てをカバーしている。

 10年前は22億円の売上で、社員数も現在の1/20だったが、現在は457億円、1,200名の従業員(平均年齢28歳)で、メーカーベンダー型である。中間幹部以上は中途採用である。中途採用者は自己主張が大きく、自分でやめたのかやめさせられたのかはわからない。

 当社はプラスティクの成型加工業であるが、それは手段である。企業の強みはプラスティクのノウハウであり、プラスティクの良さで回ってきた。

 商品アイテムは4,000あり、102点が通産省のGマーク商品で、毎年10を超えるGマーク商品を開発している。また、昨年は1,200点の商品を開発した。園芸、ペット、家庭、カー、事務  等の用品は各家庭に数10点の当社の商品があるのではないか。

 メーカーベンダーとは、製造と卸が一体化してやることでる。流通の中抜きをしてやれるものはあるが、メーカーが中卸、小売店のロットにして小売店に販売してもらう方式である。上→中→下に流れる最適の流れを供給してくれる人をベンダーという。

  メーカーと卸が一体化するとどうなるかは、製造原価は業種毎に違うものであり、5割とか7割とかになるが、作ったものを売るコストは別にある。製造原価が高い会社は利益が低いという傾向が一般的である。

 本来の問屋はメーカーの特約店であるが、現在は、小売店の代理店になっている。小売店は店舗数も多くなり、大売業になっている。物剰りになって、たくさん買ってもらうところに向くように小売店の代行業を行う。

 物流と商流のコストがかかるが、既存商品でも新商品でもマージンは同じため、小売店は新しい商品を売る努力をしないので、メーカーの倉庫に在庫が山のようになっているのが一般的である。生産した商品をスムースに販売する意味からも重要である。

 当社は、商品開発の革新、既存商品の改良を行っているが、少し位の差別化やコストを下げても効果がなく、人が作らなかった商品を作ることが重要である。

 透明なプラスティクのケース(衣装等)は7年前はなかったが、色のついたものはあった。ブリキでも他の材料でもよいものであるが、収納はものを隠すという先入観があり、開けないと中身が見れないのでどこに何があるが分からず、探す時間が掛かっていた。中身が見えるように透明にしたが、当初はマーケットが拒否反応を起こしたため、両方の商品を並べて販売したが、2週間後に歴然とした結果が現れた。

 マーケットのニーズと生活者のニーズは違うということである。用途が同じであれば機能を変える機能が同じであれば用途を変える。当社の開発商品の半分はそのような発想で生まれた。プランターの例=素焼き鉢→プラスティク(素焼きの機能は土に近い機能がある。プラスティクを素焼きの機能に置き換えるため、メッシュのすのこ形式の上げ底にし、かつ、プラスティクの良さを活かすため形を変えた。)

 生活者の不満を解決すること、当社のほとんどの商品はオンリーワン商品であり、1割に当たる120名が生活者の代弁者として研究開発に従事している。)

 また、マーケットニーズはあまり研究しない、市場にあるデータを分析しても意味がない。そこにあるのは差別化商品しかできない。一般大衆のニーズを頭の中に入れることが大切ではないか。

 生産物流の革新については、生産立地と物流立地は違いがあり、例えば、花王の工場は不便な場所にあるが、物流でカバーしている。物流センターの中の一部が工場になっている。集中生産した方が安いが、工場と物流拠点が違うと横持ちのコストが掛かることになる。生産のイノベーションより、物流のイノベーションが重要である。コストが低くなるばかりか在庫が減る。現在の在庫は0.8カ月である。トヨタは自社の在庫を減らす発想である。

 商品管理だけでなく、在庫管理を含めてコンピュータを使用している。自動倉庫をパレット(95千パレットを保有)単位で管理している。したがって、問屋が嫌がる商品も扱え、トータルのコストも低くなっている。いわばビジネスチャンスに合わせた生産方式とも言える。

 7,000の小売店の内、300社とコンピュータのネットワークで結ばれている。100%見込み生産で対応している(見込み生産を受注生産的にした)。

 店は売れる物しか注文しない。当社は単体発想で物事を考える。業種が業態に変わった。会社自体が小さな異業種交流を行っているともいえる。

 中途採用する際も異業種から採用する。意識だけでなく組織自体も変えており、組織を日々変化させる必要があるが、それには全体をみて考える必要がある。

 創造的(ニーズ型)中小企業は活性化する。シーズは重要でない。

価格、品質、機能は小売店の店頭においては同じであり、CS(顧客満足)が重要で、顧客は商品を買うのでなく機能を買うとも言える。

変化への対応、スピードがポイントになる。

 ニッチとは大企業と中小企業の住み分けであり、大手ができないことをやる必要がる。組織が大きくなればなるほどコントロールできなくなる。価格競争は重要であるが絶対条件ではなく、価格競争で対応しても無理とも言え、小回りを聞かせる必要がる。

 「果敢」「値頃感」「マーケットキャッチアップ」が重要である。

 

 

会社プロフィール(平成4年現在 細貝メモ)

アイリスオ−ヤマ      園芸用品からペット用品まで。快適ライフの必需品で150%急成長

代表取締役社長 大山健太郎 (昭和20年7月生まれ)

〔ポイント〕

・プラスチック製品の企画、製作、販売(オリジナルブランド)

・戦略的情報システム(SIS)により全国の小売店をオンラインで結び商品管理

・全過程を一貫して行う

・物流センタ-の中に工場がある

・年間250日、どこかで研修を行う(社長も研修を受ける)

 (部・課長研修、主任・係長研修、新人研修)

・研修の成果は社員の昇進で評価する

・2人だけでも会議(議事録を付け、次の打合せに活用)

・年間3割社員が増える(モラル、規律は徹底的に教える)

・営業所も10人以下にし、画一化する(運営形態が同じなのでやりやすい)

・4つの工場も同じものを生産(価格も全国統一)

・ホ-ムセンタ-(全国の家庭用品販売小売店=ハンズ等)に販売

・2400の商品アイテム=1日に1つ増える(2つの似た商品→売場でユ-ザ-に決めてもらう)

・顧客の意見と一体→メ−カ−ベンダ−

 (営業本部が顧客の苦情を処理=苦情ル-ム(ユ-ザ-から苦情のあった商品を集めておい て次の商品開発に役立てる=企画プレズンテ-ション))

 (収納箱=中身が見えない→中が見えるようにする。)

・自家発電装置の設置により電気代を1500万円→800万円に削減、予熱を工場の床暖 房や温水プ-ル(社員が利用できる)に活用

・当初から全国展開を計画(ホ-ムセンタ-が伸びることを見越して直接小売店に販売=商権 は最後までまもる)

 

 

 

 

〔業績推移〕

     売上  経常利益          売上  経常利益   (単位:億円)

H1  100   11.2    H4  350    35

 2  146   12.9    5  500    60(予想)

 3  225   26

 

〔あゆみ〕

S39 創業者の父が急死したため19歳で社長に(余暇の時代を予測し、農業用の養育箱を園  芸用プランタ-に、ペット用品は80%のシェア)

H 3   大山ブロ-工業から現社名に

 

(注)この内容は筆者が平成4年にプレイベートに調査したもので、その後の内容の改訂  は行っていない。