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モデル地域秋田
対象流域一覧

米代川流域、雄物川流域、子吉川流域

参加事業体

鹿角森林組合、大館北秋田森林組合、白神森林組合、秋田中央森林組合、男鹿森林組合、五城目森林組合、湖東森林組合、本庄由利森林組合、仙北西森林組合、仙北東森林組合、横手市森林組合、雄勝広域森林組合、秋田県森林組合連合会、秋田県素材生産事業協同組合連合会、北鹿素材生産事業協同組合、中央素材生産事業協同組合、仙北素材生産事業協同組合、(株)沓澤製材所、協同組合サンエース秋田、東北木材(株)、畠慶木材(資)、加賀谷木材(株)、秋田製材協同組合、(株)ウッド・ミル

森林・所有者情報データベース事業運営者

秋田県森林組合連合会

担当コンサルタント

秋田県立大学木材高度加工研究所

 
概要

参加する加工事業体は10事業体です。協同組合方式による大型工場の設置も計画されています。また、既存工場の能力を個別に引き上げることにより、原木消費能力と製品販売力の強化に取り組んでいます。原木の安定供給対策としては、全県を対象としたデータベースの作成に力を入れ、素材生産活動を安定して展開するための基盤として考えています。山元からの加工事業体への供給については、川上から川下までの関係者で構成する需給協議会によって品質、価格、納期などに関する合意形成を行い、直送方式による安定供給を図っています。一連の取り組みを着実に実施して効果を上げるためには、参加事業体の意識改革が重要と考えています。そのため、トータルな経済分析を行って利益見通しを提示することなどを通じて、目指すべきコンセプトの啓蒙を図っています。

加工事業体

秋田製材協同組合(秋田木材(株)、秋田パネル(株)を中心とした協同組合による施設整備を想定)、東北木材(株)、大館北秋田森林組合、(株)沓澤製材所、畠慶木材(資)、加賀谷木材(株)、本庄由利森林組合、協同組合サンエース秋田、(株)ウッド・ミル

加工事業体の素材受け入れ量の現状と目標
取り組みの内容

国産材に対する注目度が高まっていることから、原木確保競争が激化することも想定しつつ、安定供給のための素材生産力アップに取り組んでいます。具体的手法としては、高性能林業機械の導入と機械の大型化を促進し、車両系の作業システムを主体とした効率的な伐木造材作業を実現しています。その一方で、機械の稼働率を高めて効率性を確保するため、施業地1カ所の素材生産量が最低100~200m3となるように団地化を促進しています。
施業地確保のツールとなるデータベースは、秋田県森連が県内全域を対象に作成しています。当モデル地域では、このデータベースがシステム全体を機能させるための基盤になると認識しています。そのため、5年間の事業期間が終了した後にもデータベースの運営が経済的に成り立つような実用性の高い内容を目指しています。
作成に当たっては、県内12森林組合の協力の下に森林所有者への説明会を開催して伐採の意向を把握するようにしています。伐採意向のある森林については、現況調査を実施してデータベースの基礎データを作成します。ただし、データベースは民有林が対象になるので、国有林との調整も検討しています。
これらの取り組みを通じ、素材生産現場の労働生産性を平成22年度には主伐で4.7m3/人日、間伐で3.7m3/人日に引き上げることを目指しています。

素材の安定供給対策(直送等)

先行して実績を上げている合板工場向けの素材安定供給システムを製材工場に対する原木供給にも応用し、平成18年9月に設立した「秋田県製材用原木需給協議会」を核とした原木安定供給システムを構築します。
同協議会は森林組合、素材生産業者、製材工場、当地域コンサルタント、行政などの関係者で構成します。参加者の協議によって製材向け原木の品質規格を設定し、決済方法や納期、価格も調整しています。このうち原木の品質については、供給量の多くを占めることになる人工林間伐材を対象とした規格を作成しています。
合板向けのシステムでは、山元の森林組合や素材生産業者が合板工場に原木を直送し、代金の精算や改修といった商流を合板用原木需給協議会が一手に管理します。製材工場向けも同様のシステム構築を目指します。ただ、加工事業体ごとに原木に対するニーズが異なることから、原木市場のストック・仕分け機能を活用することも検討しています。
原木の運搬については、トレーラーの活用によるコスト縮減や集運材・配送システムの効率化を進めています。なお、当地域では国有林が有力な供給主体であることから、適宜連携を図るよう心がけています。

材木加工の強化策

秋田県内には年間原木消費量が3万m3以上の工場がなく、本システムによる取り組みでも協同組合方式による大型工場の整備も視野に入れ、加えてそれぞれが個性を持つ既存工場のレベルアップを個別に図ることにより、地域材の利用拡大を実現しています。
製品はスギの柱角や板類で、KDプレーナーがけを基本としています。品質面ではJAS及び乾燥秋田スギ認証による性能表示製品としての販売システムを確立しています。建築工法の今後の展開を見据えた新用途・新製品開発にも取り組んでいます。
また、会計・経理処理面から経営状況を把握した上で対応策を講じ、資金繰りの健全化など経営力の強化に取り組んでいます。

製品の販路確保策(マーケティング)

基本的には各加工事業体のレベルアップによる販売力の強化を目指しつつ、一部企業において住宅メーカー及びプレカット工場向けの直販を拡充します。主力製品はスギの柱角や板類ですが、品質重視の姿勢も徹底します。また、市場が何を求めているのかを的確に把握し、その時点でもっとも売りやすい製品の製造に力を入れるなど、柔軟な対応ができるような体制を心がけています。さらに外材の取り引きシステム以上に洗練されたマーケティング戦略を構築し、市場シェア拡大を目指しています。

全体推進計画

秋田県のスギ人工林は36万6,000ha(民有林23万5,000ha、国有林13万1,000ha)で、蓄積量は7,800万m3と資源としては豊富です。ただし、従来のような高品質材生産で市場を確保することは、資源的制約、市場の変化の両面から難しく、一般材をベースとした品質の確保と販路開拓を進めなければなりません。その点で言えば、当地域は古くからの有力産地であるだけに従来からの取引慣行が根強く残っており、新生産システムの効果を上げるためには、参加事業体の意識改革が重要だと考えています。
そのため、参加事業体に対するアンケート調査や講演会などを適宜実施し、各事業体の意識向上に努めています。さらに①山元→工場入荷、②工場における加工、③製品の販売促進――のそれぞれについて、生産・製造経費、流通経費、製品原価などを綿密に分析し、どこを改善すればどの程度の利益が見込めるのかを具体的な数字で示し、経営意欲を高めています。
また、林業経営の収益性を改善するため、保育関係経費の削減を進めつつ、立木取り引きの透明度を高めて林家が着実に収入を確保できるように心がけています。
これらの取り組みを着実に実施するため、外部のシンクタンクなどで構成するコンサルタントチームを置き、専門家の知見を積極的に活用しています。

秋田モデル地域の供給フローチャート