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モデル地域奥久慈
対象流域一覧

奥久慈・阿武隈川流域(福島県)、八溝多賀流域(茨城県)

参加事業体

西白河地方森林組合、東白川郡森林組合、茨城県森林組合連合会、個人森林所有者(10名)、協和木材(株)協栄会(素材生産業57人・事業体)、協和木材(株)、(株)シーズ、(株)郡山木材市場、福島県郡山地区木材木工工業団地協同組合、協同組合奥久慈木材流通センター、奥久慈流域林業活性化センター

森林・所有者情報データベース事業運営者

東白川郡森林組合

担当コンサルタント

(株)山田事務所

 
概要

有力国産材製材メーカーである協和木材(株)が素材生産~原木直送~製材加工~製品販売のすべてに直接携わり、山元から製材加工販売まで一貫した地域材の大量供給・加工システムを形成しています。その一方で地元及び隣県の森林組合系統において、データベース構築、施業システムや組織体制の改善などを進め、森林所有者に対する調整窓口としての機能も担っています。
協和木材(株)は独自の資金調達により、平成18年8月に大型製材工場を竣工。年間スギ原木消費量は平成22年度までに12万m3に引き上げる予定です。自社山林部門で山元から直接原木を調達するほか、地元原木市場、森林組合、素材生産業者などと直送に関する協定を結び、原木の安定確保に努めています。協栄会を含めた各原木供給者は施業の集約化や機械化を進めて素材生産の効率化に取り組み、森林所有者への利益還元を図っています。

加工事業体

協和木材(株)

加工事業体の素材受入量の現状と目標
取り組み内容
素材生産の強化策

協和木材(株)の山林部門が地域の森林所有者から立木を購入し、同社傘下の素材生産業者である協栄会が素材生産作業を担っています。協栄会はいわゆる一人親方の素材生産業者を同社専属の伐採搬出チームとして組織化したもので、60名近くが参加、1班3~4名のチームを組み、素材生産作業に従事しています。
現在の生産性は主伐が10m3/人日、間伐が5m3/人日と国内では高い水準にあるものの、今後さらに効率化を図り、平成2 2 年度には主伐が13m3/人日、間伐が7m3まで引き上げる計画です。将来的には主伐の場合、ヨーロッパ並みの20m3/人日を目指しています。
そのための方策として機械化を一層推進させるよう、協栄会としてフォワーダやプロセッサといった高性能林業機械を購入、施業現場ごとに最適なタイプの機械を配備し、バランスのとれた効率性の高い素材生産作業の実現を目指しています。また、協和木材山林部門のサービス関係業務を強化し、作業道設計、最適機械の配備計画などを適切に実施する体制も整備しています。
一方、従来は育林事業を中心に展開してきた西白河地方森林組合と東白川郡森林組合も林産事業の強化を図っています。両組合では平成16年12月に共同で研究会を立ち上げ、経営基盤強化に向けた議論を開始しています。そこでの議論を踏まえ、両組合間での連携強化や担い手確保などに取り組んでいます。

素材の安定供給対策(直送等)

協和木材(株)では所有面積10ha以上の森林所有者から立木を購入するとともに、その際、隣接する小規模所有者に対する営業活動も行って施業の集約化を図っています。それら小規模所有者からの立木購入量は全体の20~30%に達しています。森林所有者が自ら施業計画を策定する際にも協力するなどの取り組みを通じて所有者の信頼を得ており、継続的な取り引きが実現しています。さらに10年ほど前に施業方法が間伐中心になってからは、顧客ごとの施業データを蓄積し、前回の施業内容を踏まえて効率的な作業ができるようにしています。こうした取り組みを通じ、所有者への利益還元も図っています。
協栄会では現在、月間7,000m3の原木を生産し、そのうちの5,000m3を協和木材(株)に供給しています(2,000m3は流通ルートで販売)。協和木材(株)の新工場の原木消費量は平成18年度末時点では月間1万m3で、協栄会から調達する以外の5,000m3については原木市場などから購入しています。新生産システムによる取り組みでは、協栄会からの調達、原木市場等からの買い付けの双方を拡大するとともに、後者については協定に基づく直送化を図っています。また、隣接する茨城県内の森林組合との連携も強化しています。一方、データベース事業の実施主体である東白川郡森林組合では、福島県が導入するGISシステムとの互換性を図りつつ、西白河地方森林組合の管内も含めたデータベースを構築しています。

材木加工の強化策

協和木材(株)の新工場は2シフトで年間スギ原木消費量12万m3を目指しています。製材ラインは柱専用ラインと中大径材用ラインの2ラインで、柱専用ラインにはノーマンツインバンドソーが3機設置されています。規模拡大によって製造コストを引き下げているほか、24時間稼働の木屑焚きボイラーを導入し、製材端材やオガ粉、プレーナー屑などを熱源として利用しています。施設整備としては、人工乾燥機の増設や内装材加工施設の導入を計画しています。

製品の販路確保策(マーケティング)

主力製品はスギの柱角で、ほかにスギの梁桁や間柱も製造しています。製品の7割は人工乾燥材で、他の3割は乾燥が行き届き、寸法精度も確かな天然乾燥材を製造しています。販売先は人工乾燥材の場合、ほとんどがプレカット工場向けで、ハウスメーカーからの直接発注にも対応しています。天然乾燥材は無垢材や自然素材にこだわりのある年間建築棟数が30~300棟の中堅工務店に直接販売しています。
大規模工場が稼働し、それによって製造コストの引き下げが可能になったことで、量的にも価格的にも集成材と対抗できる競争力が備わりました。今後は関東市場で集成材からシェアを奪還することを目指しています。

全体推進対策

協和木材(株)と同社協栄会による一貫体制が中心になっていますが、福島県及び茨城県の周辺の森林組合系統とも連携した原木の安定供給システムの構築が大きな課題であることに変わりはありません。当地域の森林組合はこれまで育林中心に事業を展開してきたために、林産能力の引き上げが必要で、零細な森林所有者を取りまとめるためのノウハウも身に付ける必要があります。そのため、同社および協栄会の取り組み強化と合わせ、参画している森林組合の組織体制の改善、生産力の強化などを積極的に推進することを目指しています。

奥久慈八溝モデル地域の供給フローチャート