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第14回「新たな木材利用事例発表会」を開催しました

 

第14回「新たな木材利用事例発表会」を開催しました


 第14回「新たな木材利用」事例発表会は、令和5年2月15日(水)13:30~16:00において、木材会館7階大ホールにおいて開催しました。
 木材関係業界のほか、建築・設計、土木、家具・建具、行政・地方公共団体等、幅広い業種の方々を含めて約100名のご参加をいただきました。
 開催にあたりまして、多大なご協力・ご支援をいただいた関係各位の皆様に厚くお礼申し上げます。


1 開催日等

日 時   :令和5年2月15日(水) 13時30分 ~16時00分
場 所   :木材会館(東京都江東区新木場1-18-3)
主 催   :一般社団法人 全国木材組合連合会、木材利用推進中央協議会
後 援   :林野庁、国土交通省、(公財)日本住宅・木材技術センター、
 (一財)日本木材総合情報センター
参 加   :約100名(木材関係、建築・設計、土木、家具・建具、行政・地方公共団体等)

 

2 事例発表 

〇第一部 13:40~14:35
   「脱炭素社会の実現に向けた木造マンションへの挑戦」
    三井ホーム株式会社 施設事業本部 事業推進室 事業推進グループ長
     依田 明史 氏

〇第二部 14:45~15:40
   「地域の山を活かす小さな製材所の仕事」
    野地木材工業株式会社
     野地 麻貴 氏

〇第三部 15:40~16:00
   「森林に還る(もりにかえる)ウッド・チェンジ」
    林野庁林政部木材利用課 課長補佐
     石飛 法子 氏

 

<当日の発表の概要は、以下のとおりです>

 

〇第一部 13:40~14:35
   「脱炭素社会の実現に向けた木造マンションへの挑戦」
    三井ホーム株式会社 施設事業本部 事業推進室 事業推進グループ長
     依田 明史 氏


【概 要】
 冒頭、京王線稲城駅から徒歩3分の場所に建築した5階建て集合住宅「MOCXION[モクシオン]INAGI」(1階RC造、2~5階木造、総住戸51戸)を紹介。当建築は、「2021年度グッドデザイン賞」、「ウッドデザイン賞2022」など多くの賞を受賞し注目を浴びています。
 次いで依田氏より、中大規模木造建築普及の鍵として、木造建築の「経済的価値の向上」と、「物理的価値の向上」を指摘。「経済的価値」については、マンションの定義として鉄筋コンクリート造かその他堅固な建物とされている一方であいまいな部分があり、木造マンションにおいて「堅固な建物の要件」を満たすうえで、3階建て以上、住宅性能評価書の取得等の要件を兼ね備えることで、第三者機関によるエンジニアリング・レポートにおいて物理的耐用年数79年との評価を取得。その結果、監査法人の承認の下で長期間の耐用年数が証明され、鉄筋コンクリート造と同等の「減価償却期間47年」での会計運用が実現することとなり、中高層木造建築に対する投資可能性の拡大、金融機関・ディベロッパーなどからの高い評価と多数の相談の獲得をもたらすこととなりました。
 一方、「物理的価値の向上」については、環境面における、建築時のCO2排出量はRC造の約1/2、熱伝導率はコンクリートの約1/10、「木」が長期間炭素を固定化といった特性に加え、性能面における、壁倍率30倍超の高強度耐力壁、独自開発のダイダウンシステム(地震の際に耐力壁にかかる回転の力を抑制し転倒を防止する金物)の開発・採用や、耐火性能や遮音性能における独自開発での技術・工法の利用が紹介されました。
 加えて、入居者アンケート調査結果や事例紹介のうえ、ウッドショックを経て国産木材活用に向けた取組、高品質な木造建築の提供の取組についての意欲を表明して講演の締めくくりとなりました。

 

 

〇第二部 14:45~15:40
   「地域の山を活かす小さな製材所の仕事」
    野地木材工業株式会社
     野地 麻貴 氏


【概 要】
 野地木材工業は、88%が森林で吉野杉の産地でもある三重県熊野市に所在して製材(スギ、ヒノキ)、内装材加工を営み、製材量は11千㎥/年で全国的にみると小規模工場ですが、3つのこだわりとして①「構造材から内装材までなんでもつくる」、②「製材~乾燥~加工 全製品一貫生産」、③「高まる市場要求 品質に対応します」を掲げ、野地氏も100%自分が納得できる製品をお客様に提案できる幸せを感じて仕事に取り組んできました。
 このような中で、野地氏は「自社の取組や製品をもっときちんと提案したい」との思いから、設計事務所、工務店への営業を始め、「お客様は作りたい空間がたくさんある」、「オリジナルなものを使った空間を作りたい」、「お客様は山(川上)と繋がりたい」といった需要を掴みました。そして「軒のない住宅に木の外壁を使いたい」「無垢の質感を損なわず耐久性を高めた外壁材はないか」といった具体的なニーズに応えるうちに、順調に顧客を増やしました。
 そこから、和室が減りヒノキが売れない中で、どうすれば現代の住宅に活かすことができるのか、という新たな問題に直面します。これに対しては、設計士との協力によってデザイン力を活かしたオリジナル商品を開発し、それら商品のプロモーションとしてオンラインセミナーの開催、実際に商品の価値や熊野の価値を体感してもらう企画などの独自の取組みを開始します。
 野地木材工業として、顧客・山・地域が一体となり、地域の持つ価値を組み合わせて活かす役割を担う製材所を目指し、家づくりの仲間、ものづくりの仲間として一緒になって取り組んでいくことを願って講演を終えました。

 

 

〇第三部 15:40~16:00
   「森林に還る(もりにかえる)ウッド・チェンジ」
    林野庁林政部木材利用課 課長補佐
     石飛 法子 氏


【概 要】
 まず、演題にある「ウッド・チェンジ」について、「身の回りのものを木に変える」、「木を暮らしに取り入れる」など木材の利用を通じて持続可能な社会へチェンジ!する行動であることが紹介されました。
 次いで、木材利用の意義について、①2030年度森林吸収量目標での貢献(2030年度に2013年度比でマイナス46%(7億2千万CO2トン)の温室効果ガス削減のうち、森林吸収が2.7%(3,800万CO2トン)を担う)、②ビジネス面での効果(駅、病院での木材利用による利用者増、木造と鉄骨造を比較したコスト削減、工期短縮)、③心身面への効果(スギ内装材の部屋でのストレス指標物質の活性化低下、内装に無垢材を使用した部屋での深睡眠時間が有意に長くなる傾向)が説明されました。
 また、都市における木造化に向けた動きとして、建築物における木造の状況(低層住宅は木造が8割の一方、低層非住宅は鉄骨造が圧倒的多数、中高層建築はほぼ非木造)、森林・林業基本計画における都市等における「第2の森林」づくりの方針、低層住宅における更なる国産材活用、低層非住宅建築物・中高層建築物における需要拡大等の方策、通称「都市(まち)の木造化推進法」に基づく建築物木材利用促進協定制度の創設などが説明されました。
 最後に、最近の木製品、木造建築物などの具体的な取組事例が紹介され、林業は「伐って・使って・植えて・育てる」を繰り返す持続可能な循環産業であり、その一旦を担う木づかいが「森をよくする」「暮らしを変える」と強調して講演の結びとされました。

 

 


連絡先:(一社)全国木材組合連合会、木材利用推進中央協議会
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-4-3 永田町ビル6階
TEL:03-3580-3215 FAX:03-3580-3226
URL 
(一社)全国木材組合連合会  http://www.zenmoku.jp/
木材利用推進中央協議会   http://www.jcatu.jp/home/

   
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