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森林・林業基本計画案に対する全木連の意見‐全文−(2006.08.02

 

 

 

平成1882日 

林野庁林政部企画課御中

 社団法人 全国木材協同組合連合会

会長 庄司橙太郎

 

森林・林業基本計画(案)に対する意見

 

「新たな基本計画策定の必要性」など、今回の計画案策定の背景についての記述の部分で、利用可能な資源の充実、木材需要の構造の変化と新たな動きの活発化、木材作業の構造改革の必要性など、森林整備の前提としての木材産業を巡る状況をふまえたものとなっていることに対して、敬意を表するところです。その上で、本団体としては、「充実してきた利用可能な資源を積極的に利用することがきわめて重要である」という観点に立ち、以下の意見を提出しますのでよろしくご検討ください。

 

第1 森林及び林業に関する施策についての基本的な方針

1 森林及び林業をめぐる情勢の変化と施策の効果に関する評価を踏まえた新たな基本計画策定の必要性

(1)           利用可能な資源の充実

P3

高齢級の森林については、このような情勢を踏まえ、資源としての利用を考慮しつつ、…高齢級の森林について、コストを抑えた択伐や間伐といった抜き伐りの適切な実施等を本格的に進めていくことが必要となっている。

高齢級の森林については、このような情勢を踏まえ、資源としての積極的な利用を行いながら考慮しつつ、…高齢級の森林について、更新基準の明確化を前提として、コストを抑えた択伐や間伐といった抜き伐りや小面積皆伐の適切な実施等などその利用推進を本格的に進めていくことが必要となっている。

「利用可能な資源の充実」という「情勢の変化」を受け、「それを積極的に利用していく」という明確なメッセージを送るべきである。

 

第2 森林の有する多面的機能の発揮並びに林産物の供給及び利用に関する目標

4 林産物の供給及び利用に関する目標

(3)林産物の供給及び利用に向けて重点的に取り組むべき事項

P23

B消費者重視の新たな市場形成と拡大

→B消費者・需要者を重視した新たな市場形成と拡大

このような観点から、消費者の価値観形成をはかるため

→このような観点から、消費者・需要者の価値観形成をはかるため

木材の消費構造を分析すると商品選択のアクターとして政府・企業の役割が大きいと指摘されている。新たな市場形成と拡大のためには、消費者のみならず、企業の調達行動が重要。このことについては、本基本計画案の中でも、「基本的視点」(P6)の中で「とりわけ木材に関しては、消費者のニーズはもとより、それを踏まえた住宅メーカー等のニーズにも応じて…施策を推進することが必要である。」と指摘されているところであり、本修文案はその指摘と整合性のとれたものである。

なお、上記記述に関連して、「ニーズとウオンツ(欲求)を生み出す努力」とあるが、概念が日本語に十分定着していないカタカナ文字は極力さけるようにして頂きたい。

 

5 関係者の役割

(1)地方公共団体

P25

地域森林計画や市町村森林整備計画の策定等を通じ、地域特性を踏まえた関係者の主体的な取組を促進するとともに、森林を支える林業・山村の振興に取り組む。

→地域森林計画や市町村森林整備計画の策定等を通じ、地域特性を踏まえた関係者の主体的な取組を促進するとともに、森林を支える林業・山村の振興に取り組む。また、適切な調達政策、建築行政を通じ地域材の利用推進に取り組む。

地域材の利用推進に取り組む地方自治体の調達政策や建築行政の役割が大きい。住生活基本法および同基本計画にも同趣旨の記述があり連携を望む。

 

(4)木材産業関係者

P25

木材の生産、加工及び流通の合理化、ニーズに応じた技術開発、消費者への適切な情報提供等に取り組む。

木材の生産、加工及び流通の合理化、ニーズに応じた技術開発、消費者・需要者への適切な情報提供、政府等への提言・情報発信等に取り組む

「NPO等の団体においては、これらに加え、森林づくり活動の企画・提案や政府等への提言・情報発信に取り組む。」という記述に対応して、施策の対象者としてNPO団体より直接に関係の深い木材業界に対しても「政府等への提言・情報発信に取り組む」という記述があるべきである。

 

A 違法伐採対策の推進

P34

地方公共団体、森林・林業・木材産業関連団体、消費者団体等に対して「違法に伐採された木材は使用しない」ことの重要性について、の普及及び啓発活動等を推進する。

地方公共団体、森林・林業・木材産業関連団体・関連企業、木材製品調達産業団体・関連企業、消費者団体等に対して「違法に伐採された木材は使用しない」ことの重要性について、の普及及び啓発活動等を推進する。

普及啓発の手段がインターネットなど多様になっているので、対象を団体のみに限定するのは適切ではない。また、供給側の木材産業だけでなく調達側の家具、文具、住宅などの各産業への啓発が重要。

 

3 林産物の供給及び利用の確保に関する施策

P36

このため、最近の国産材の利用量の増加の兆しを踏まえつつ、国産材の利用拡大を軸とした林業及び木材産業の再生を実現するため、次に掲げる施策を講ずる

このため、最近の国産材の利用量の増加の兆しを踏まえつつ、木材とりわけ国産材の利用拡大を軸とした林業及び木材産業の再生を実現するため、次に掲げる施策を講ずる

林産物の供給及び利用の確保に関する施策、の記述のリード文、として「国産材の利用拡大を軸とした」はバランスに欠ける記述である。以下の文中の記述と平仄をあわせる。

 

P37

@    製材・加工の大規模化のための支援の選択と集中

国産材の安定的な需要を確保するため、大規模需要者等への販売を念頭に、品質及び性能の明確な製品の安定供給が可能な、高い事業効果が見込まれる事業者に対する集中的な支援により、製材・加工の大規模化を推進する。

@    製材・加工の大規模化のための支援の選択と集中

国産材の安定的な需要を確保するため、既存の流通加工業界への影響に配慮しつつ、大規模需要者等への販売を念頭に、品質及び性能の明確な製品の安定供給が可能な、高い事業効果が見込まれる事業者に対する集中的な支援により、製材・加工の大規模化を推進する。

既存の流通・加工業界への悪影響を極力回避しながら、また、関係者の納得のもとに進めることが重要。本文にない「選択と」いう語句を表題に用いるのは不適切。

 

A 消費者ニーズに対応した製品開発や供給・販売戦略の強化

P37

さらに、製品の供給に当たっては、品質管理を徹底し、乾燥材等の品質及び性能の明確な製品の安定供給を推進するとともに、品質及び性能の表示を促進する。

さらに、製品の供給に当たっては、品質管理を徹底し、乾燥材等の品質及び性能の明確な製品の安定供給を推進するとともに、JASマーク等による品質及び性能の表示を促進する。

法令に基づいた品質性能表示制度を例示的に特記すべき

 

P38

(2)           消費者重視の新たな市場形成と拡大

@ 企業、生活者等のターゲットに応じた戦略的普及

木材とりわけ国産材の需要を拡大するためには、消費者の価値観の形成による製品が売れる環境づくり等への戦略的な取組が重要である。

(3)           消費者・需要者を重視した新たな市場形成と拡大

@ 企業、生活者等のターゲットに応じた戦略的普及

木材とりわけ国産材の需要を拡大するためには、消費者・需要者の価値観の形成による製品が売れる環境づくり等への戦略的な取組が重要である。

P23と同趣旨

 

P38

このため、国産材利用の推進が京都議定書の目標達成に必要であることをはじめとした木材利用の意義、木材の良さ、我が国の木の文化等について、一般消費者に分かりやすく、直接訴えるなど国民への集中的な普及を推進する。

このため、木材が再生可能であり製造過程の省エネルギー性などエコマテリアルであることに加え、国産材利用の推進が京都議定書の目標達成のためには、に必要であることをはじめとした木材利用の意義、木材の良さ、我が国の木の文化等について、一般消費者・需要者に分かりやすく、直接訴えるなど国民への集中的な普及を推進する。

「木材利用の意義、木材の良さ」について需要者等に理解を求める場合のキーワードは、国産材の利用拡大の文脈としての「京都議定書の目標達成」だけでなく、木材の基本的な属性をふまえたものとすべきである。

 

P38

さらに、市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ木材利用に関する環境教育活動を促進する。

さらに、市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、業界内外の専門家の育成に努めるとともに、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ木材利用に関する環境教育活動を促進する。

業界内部でも「木づかいコーディネーター」など専門家の養成についての議論が進んでおり、関連した既述をしていただきたい。

 

(4)林産物の輸入に関する措置

P39

世界有数の林産物の輸入国として、各国の森林の有する多面的機能の発揮を損なうことがないよう適正な輸入が確保されることを旨として、二国間、多国間の国際的な枠組みの中で、輸出国との関係の維持、外国との会合の場等における情報収集情報交換の推進、海外における生産供給動向等の情報収集、分析の充実等の国際的連携を図っていく。

世界有数の林産物の輸入国として、各国の森林が持続可能に管理され、合法的に生産された木材が適正に輸入されることを有する多面的機能の発揮を損なうことがないよう適正な輸入が確保されることを旨として、二国間、多国間の国際的な枠組みの中で、輸出国への働きかけと連携の強化関係の維持、外国との会合の場等における情報収集情報交換の推進、海外における生産供給動向等の情報収集、分析の充実等の国際的連携を図っていく。

海外に向けたメッセージとなることを考えると、なるべく国際的な文脈で理解しやすい文言にしておくべきではないか?

 

5 団体の再編整備に関する施策

P40

団体の再編整備に関する施策(表題)

森林組合系統団体の再編整備に関する施策

原文の表題は誤解を生む可能性がある。

 

第4 2 財政措置の効率的活重点的な運用

P41

新たな施策を講じるに当たっては既存施策の廃止・見直しを徹底することにより、施策の実施に必要な国民の負担を合理的なものとするとともに、新たな施策に伴う負担の必要性について国民の理解と納得を得る観点から、将来の負担の見込みを含め、国民に分かりやすく提示するよう努める。

新たな施策を講じるに当たっては既存施策の廃止・見直しを徹底することにより、施策の実施に必要な国民の負担を合理的なものとするとともに、新たな施策に伴う負担の必要性について国民の理解と納得を得る観点から、将来の負担の見込みを含め、国民に分かりやすく提示するよう努める。

新たな施策は新たな行政の必要性から生まれるものであり、その事業の実施に必要な負担の合理性について、国民への理解と納得を得る観点からの努力は必要であるが、必要のなくなった既存施策の廃止・見直しの徹底は、それとは関係なく常に行うべきものであり、両者は本来無関係のものではないか。

 

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